わらび座ミュージカル「ジパング青春記」特設ページ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年10月16日 09:30

「減薬・偽薬」のススメ(前)

大さんのシニアリポート 第82回 

 薬を飲むことが常態化すると、何のために薬を飲むのかを失念してしまう高齢者が多い。運営する「サロン幸福亭ぐるり」(以下「ぐるり」)の常連も例外ではない。「先生が出してくれるから飲んでいる」「飲まないと不安」というのが通常の会話で聞かれる答だ。「薬の名前は?」と聞いてもまともに答えられる常連は皆無である。

 実際、その薬が効いているのかどうか、疑わしい人も少なくない。「あっちが痛い、こっちの調子が悪い」といいつつ、疑いもせずに薬を飲み続ける。高齢者の薬、それ全部必要ですか?

 9月11日の朝日新聞朝刊に、「副作用と気づかず新たに処方…増える一方」というサブタイトルで、神奈川県にある有料老人ホームに暮らす80代の女性のことを報じている。彼女は認知症をはじめ、脳梗塞、過活動膀胱を抱える。症状を担当医に訴えるたびに薬が増え、最高18種類の薬が処方されたという。症状は一向に改善しない。そこで施設の薬剤師Mさんの提案で1年かけ、10種類までに減らした。

 すると、日中はベッドから降りて起き上がれるようになり、食事も入所仲間と一緒にとれるようになったというのだ。この施設では医師の診療に薬剤師も立ち会い、「減薬」に努めた結果、約120人の入所者に対し、4年間で約200種類の薬を減らした。薬剤師は「症状が出た時だけのむべき対処療法の薬をのみ続け、副作用を起こすことが少なくない」と話した。

何がアルツハイマーをつくるのか?

 「ぐるり」の常連だった中井要蔵(仮名)さんが医者に重度の認知症と判断され、抗認知症薬のアリセプトの服用を勧められた。アリセプトの副作用は下痢である。高齢者の場合、消化器官の機能低下による脱水症状と食欲不振のため、著しく体調を壊す場合が少なくない。不吉な予感は的中した。数日後中井家を訪ねると、憔悴しきった中井さんがいた。トイレまでの廊下が失禁で濡れ、食欲がないまま体力が落ち、寝たきり寸前の状態だった。間違いなくアリセプトの後遺症だ。(このあたりは拙著「『親を棄てる子どもたち』平凡社新書」に詳しい)

 『認知症をつくっているのは誰なのか』(村瀬孝生・東田勉 SB新書 2016年)のなかで、「医学界と製薬会社が認知症をつくっている」「厚生労働省のキャンペーンが認知症をつくっている」「介護を知らない介護現場が認知症をつくっている」「老人に自己決定させない家族が認知症をつくっている」と現行介護制度を徹底的に非難し、「『とりあえずアリセプト』が常態化した認知症医療」を痛烈に皮肉る。

 最近になってようやく医学界が重い腰を上げた。日本精神科病院協会が、「重度のアルツハイマー型認知症患者を対象に、抗認知症薬の適正使用手順書」を作成したと朝日新聞(2019年9月21日夕刊)紙上で報じている。「不整脈や嘔吐といった副作用が重い場合は家族に十分説明しつつ薬を減量・中止する」「効果が疑わしい場合にも同様」を検討するとした。

 「アリセプトなどの抗認知症薬は、症状に進行を遅らせるものの、病気自体はくい止められない。効くかどうかは個人差が大きく、全般的にみると治療として意味があるレベルには達していないともいわれる」(編集委員・田村健二)と締めくくる。ようやくここまできた。世間の批判を無視できなくなってきたのだろう。

 前出の『認知症をつくっているのは誰なのか』に出てくる「国と医学界と製薬会社の思わく(出来レース)」と勘ぐられても仕方がない。現場の医者は「とりあえずアリセプト」と揶揄されるように、薬ならじゃんじゃん出す。「製薬会社のため」ともいえるだろうし、薬局からのバックペイがあるとの噂も絶えない。受け取る患者も「薬が多いと安心する」という思いが強く、担当医に薬を出すことを強要する。

 逆に、薬の効能について説明を求めることはしない。それなのに飲み忘れた薬で薬箱が溢れかえっていても疑問に思わない。なにしろ後期高齢者の医療費は1割負担だから懐に響かない。国の医療費だけが青天井に膨れあがる。介護保険制度が「亡国の制度」といわれる由縁でもある。

(つづく)

<プロフィール>
大山眞人(おおやま まひと)

 1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務の後、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ二人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(講談社)『親を棄てる子どもたち 新しい「姥捨山」のかたちを求めて』(平凡社新書)など。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2020年01月26日 13:57

山本太郎氏が都知事選擁立を「一切聞いてない」、長妻発言に敬意と警戒

 立憲民主党の長妻昭選対委員長が7月5日投開票の東京都知事選にれいわ新選組の山本太郎代表を野党統一候補として擁立する可能性に言及したことについて、山本氏は24日、「そ...

2020年01月26日 07:00

フットワークの良さを武器に100周年を目指す老舗企業

 福岡地区で老舗として知られる博多電設工業(株)は、1936年11月に西嶋要次郎氏が西嶋電気商会として創業した電気工事業者である。54年1月に(有)博多電設鉱業所とし...

2020年01月26日 07:00

福岡の街づくりに青春を全力投入されたら如何ですか

  福岡では天神再開発、博多周辺開発で中心部の街づくりが進行している。博多の街は1587年に豊臣秀吉による区割りで現在の基盤が形成された。そして第二次世界大戦で度重な...

2020年01月26日 07:00

お客さまの健康を第一に考え『最善主義』を貫く健康食品業者

 東京製薬(株)は2016年11月に設立された医薬品および健康食品の製造販売業者。代表取締役社長を務める森本匡豊氏は薬剤師の資格をもち、主に高齢者を対象に、古くから生...

2020年01月25日 15:56

「メイト黒崎」が自己破産~負債総額約25億円

 北九州市の商業施設「クロサキメイト」(北九州市八幡東区)を運営する「株式会社メイト黒崎」は、下資料の通り、1月24日付で東京地方裁判所へ自己破産を申請し、同日付で保...

2020年01月25日 07:30

国内中核港をより進化させ地域活性化に挑む

 博多ふ頭(株)は、1993年4月に設立された港湾企業である。福岡市が51%、地元の海運会社など港湾業界関係企業が49%出資した第3セクターである。“管理型から経営型...

2020年01月25日 07:00

企画・開発・販売、そして管理まで 高価値マンションの提供により安定成長を実現

 競合他社を見るのではなく、常に顧客を見る。そうしたスタンスで実に手堅いビジネスを繰り広げているのが(株)ネストだ。2007年の「ネストピア大濠公園」を手始めに、現在...

2020年01月25日 07:00

マンションベースにさまざまな建物を企画 運用では新サービスにも挑戦

 2012年3月の設立から投資マンション「モダンパラッツォ」を供給してきた(株)モダンプロジェ。設立からわずか7年半にも関わらず、10月末時点で100棟(木造含む)の...

2020年01月24日 18:00

【検証】「ゴーン国外脱出」~ゴーン効果

 日本の刑事司法の違法性・犯罪性が外国からの情報によって次々に世界に発信され始めた。日本国民はいつも最後に真実を知らされる破目になっている。

2020年01月24日 17:13

東京・有楽町のランドマーク「東宝ツインタワービル」が解体へ

 東京都千代田区有楽町にある「東宝ツインタワービル」が、建替えにともなう解体工事に着工したことがわかった。 同ビルは1969年5月開業。屋上に見える2基の屋上広告塔...

pagetop