2024年04月26日( 金 )

ベストセラーとなった「反日種族主義」とその反響(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 韓国がさまざまな問題を抱えていることは間違いないが、そのような状況下にあっても、世界で最もダイナミックに発展している国であることも、まぎれもない事実である。

 どんな社会であっても、必ず良い部分と悪い部分が存在し、どちらにスポットライトをあてるかによって、見え方がまったく違ってくる。国も個人も、バランスの取れた現状認識が望ましいことはいうまでもない。とくに、自分の問題は棚に上げて、相手の欠点だけを詮索するのは、今後の発展のために何のプラスにもならないと思っている。しかし、現在の状況は日韓関係を悪くするような発言と行動ばかり目立つので、誠に遺憾である。

 それでは、同書で記述されている内容のなかで、どの部分が韓国人にとって衝撃的だったのだろうか。日本が韓国で実施した土地調査事業で、日本人は朝鮮人の土地を強制的に奪い、それに反抗する朝鮮人は虐殺したと教わっていた。とこころが、この本では正反対の主張をしている。また、日本が朝鮮半島から持って行った米は収奪ではなく、輸出であったと、この本は主張している。 さらに、徴用工は強制連行したわけではなく、募集と政府の斡旋で、志願、あるいは動員された労働者であり、朝鮮人青年たちは先を争って日本軍に志願したと記述されている。

 現在、両国政府間で争点となっている慰安婦問題についても、慰安婦は公娼制度の一形態で、業者がそれを募集したことはあっても、政府が主導して強制的に女性を拉致したりしていないと主張している。

 韓国で主張されている性奴隷や20万人説は捏造であるという日本側の認識と同じ立場である。しかし、歴史の専門家ではない一般人にとっては、この本の主張のどこまでが事実であるか判断するのは難しいのではなかろうか。

 当時の状況からすると、生活苦で慰安婦募集に応じた人もいただろうし、本人の意志と反して両親が生計のため、娘を売り渡したケースなど、いろいろなケースがあったことは推測できる。しかし、強制的に連れていかれたと主張する人が韓国だけでなく、外国にも一部存在するのは事実である。また、すべてではないにしても、一部では官庁主導で慰安婦募集をしたという資料も出ている。募集ではあっても、募集する過程で暴力が加えられたという強制を意味する日本人学者の研究もある。

 最後に、日本に行く前に、私は独島(竹島)が韓国の領土であることを疑ったことがなかった。今のように領土問題が発生する前の話である。歴史的な事実は別にして、韓国人は誰でもそのように思っている。しかし、筆者も韓国で聞いていた話と全然別の話を日本で聞くことになって、はじめはびっくりした。日本の認識は竹島は日本の領土だが、韓国に占領されているという認識である。領土問題は基準をいつの時代にするかによって、このように双方の主張が異なってくる。

 領土問題でもよくあるように、相手を排除するとか、相手を嫌悪するだけでは問題の解決には至らない。相手の意見に耳を傾け、もっと事実と真剣に向き合うことしか、日韓関係の回復の道はないのではないかという気がする。対話を通じて相互理解を高めていくことで日韓関係が改善していくことを祈ってやまない。

(了)

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