2024年04月20日( 土 )

変貌しつつある大阪港~「阪神港」はどう生まれ変わるか?(1)

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 近年、大阪港への注目が高まっている。そのきっかけは、大阪港に浮かぶ人工島「夢洲(ゆめしま)」での大阪・関西万博開催、IR(統合型リゾート)誘致だ。大阪港は、古代から住吉津、難波津と呼ばれ、交易・交通の要衝として発展。江戸時代には「天下の台所」として、日本の物流、商業の中心地として栄えた。これを支えたのが、日本全国を網羅する水上交易ネットワークだった。大阪港が近代港湾として開港したのは1868年。以来、国際貿易港として、大阪市を中心とする近畿圏の経済活動、市民生活を支えてきた。現在も日本の“五大港”(東京港、横浜港、名古屋港、大阪港、神戸港)の1つに数えられる。大阪市は2019年、大阪港港湾計画を13年ぶりに改訂。物流、交流、環境、防災の4つを柱にしたみなとづくりを進めている。大阪港は今後、どのような変貌を遂げるのか。今回、物流、クルーズ、万博、IRの4テーマに絞り、それぞれの現状と課題などについて取材した。

凋落の一途たどるコンテナ港湾機能

 現在の大阪港は、その多くが埋め立てによって形成されている。天保山クルーズターミナルやUSJなどが立地する「在来地区」や、フェリーターミナルや大阪府咲洲庁舎(旧・WTC)などが位置する「南港地区」、スポーツ・レクリエーション施設、物流施設などが集積する「舞洲地区」、夢洲コンテナターミナルなどのある「夢洲地区」に分けられる。

 大阪港のコンテナ取扱量は年々増加を続け、ここ10年ほどは200万TEU程度で推移している(国内5位)。ところが、世界のコンテナ取扱量は、中国をはじめアジア諸国の急速な経済発展を背景に、ここ30年間のうちに爆発的に増加。コンテナ船も大型化した。世界上位の港の取扱量も、数千万TEU(トップの上海港は4,000万TEU以上)とケタ違いに膨れ上がった。巨大化した上海港や釜山港などは、国際的な基幹航路が集中するハブ港としての地位を確立している。

 その一方、日本に寄港する基幹航路は減少しており、日本の港は五大港を含め、ハブ港でトランシップ(コンテナ積替え)されたコンテナ輸送のみを行うフィーダーポートと化しつつある。フィーダーポート化すると、輸送にかかるコスト、時間がかさむほか、積替えによる荷傷みリスクも増える。フィーダーポート化により、日本のコンテナ港湾のプレゼンスは、凋落の一途をたどっている。

「国際コンテナ戦略港湾」神戸港とともに指定

 国土交通省は2010年、国内港湾の国際競争力強化のための「選択と集中」を目的に、「国際コンテナ戦略港湾」に阪神港(神戸港、大阪港)、京浜港(東京港、川崎港、横浜港)を選定。この選定を経て、「国際戦略港湾」に指定されたこれらの港は、国が実施する港湾工事の国費率が一部引き上げられるほか、国が指定した港湾運営会社に対する行政財産の貸付制度、施設整備に係る無利子貸付制度、港湾運営会社が実施する集貨事業に対する国の補助制度などが創設され、民の視点を有した港湾運営の戦略的、一体的運営による「日本の復権」が図られた。

 14年には、阪神港の運営会社・阪神国際港湾(株)、16年には、京浜港(東京港除く)の運営会社・横浜川崎国際港湾(株)がそれぞれ設立された。阪神国際港湾の設立に際しては、神戸港を運営していた神戸港埠頭(株)と大阪港を運営していた大阪港埠頭(株)を経営統合。2埠頭会社は引き続き資産を保有し、阪神国際港湾が運営を行う上下分離方式をとった。阪神国際港湾の株主構成を見ると、国土交通大臣(34.2%)、神戸市(30.8%)、大阪市(30.8%)となっており、いわゆる第三セクターだ。

 初代経営トップ(会長、社長)には、民間出身の2埠頭会社トップが就任。現社長は、(株)商船三井出身の外園賢治氏が務めている。現在の社員数は100名程度。うち国土交通省、神戸市、大阪市からの出向者が約30%を占める。港湾運営会社の制度設計当初は、「『民』の視点による戦略的な一体運営の実現」を謳っていたが、実際の新会社は官の関与が色濃い。管理職の多くは、官の出向者が占めている。

 阪神国際港湾のミッションは、「集貨(広域からの貨物集約など)」「創貨(背後地への産業集積)」「競争力強化(大深水コンテナターミナルの機能強化やインセンティブの付与など)」を通じたコンテナ取扱量の増加だ。

(つづく)

【大石 恭正】

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