2024年03月19日( 火 )

お仏壇のはせがわ中興の祖・長谷川裕一氏の経営者としての最終的総括(1)

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 「お仏壇のはせがわ、再生なるか」をテーマに2回にわたって報告した。
(株)はせがわの前途は非常に険しい。潰れることはなくてもじり貧傾向を下っていくであろう。前号で指摘した通り市場は半減しており仏壇売りを主体とした事業形態では業績回復は無理である。はせがわの経営陣のなかに事業転換できるリーダーシップを発揮できる人材がいるかどうか決め手になる――

 筆者自身も2014年に痛感した。弊社設立の同志が亡くなり、四十九日忌の法事に立ち会ったときのことだ。仏壇を目撃したときに絶句した。仏壇の大きさが豆粒程度なのだ。「これは30万円の値段にもならない」と試算した。同志の未亡人は「お父さんがたくさん、金を残してくれたから心強いです。毎日、卓球も楽しめているからハッピー」と語っていた。故人に多大なる感謝の念を表す未亡人でさえ、仏壇をこの程度にしか扱っていないのだ。

 結論はというと、はせがわを成長軌道に乗せるには、別次元の新しい事業の柱を開拓せねばならず、そうでなければ衰退の道しかない。お仏壇のはせがわ中興の祖・長谷川裕一氏も、同社を上場した際にも「次の事業の柱を築かないといけない」と自問自答を繰り返していた。ではこの機会に長谷川裕一氏の経営者としての最後の総括をしてみよう。

長谷川裕一氏に刺激を与えた先人達

 長谷川裕一氏がはせがわを上場させるにあたって刺激を与え先輩の偉大な経営者たちの結末から触れていこう。

(1)まずはベスト電器である。1979~96年まで家電販売店チェーンで日本一を誇った会社であり、牽引者は北田光男氏である。終戦後、大陸から引き揚げてきたと本人の口から聞いたことがある。53年に九州機材倉庫を設立した。今流にいえばバッタ商品を補修して売買する商売であった。

 「バーゲンセンター」を開いたり店舗ブランド名を「ベスト電器」にしたり試行錯誤の過程を経て、拡大路線の開始時が72年の(株)ベスト電器の設立である。10年後の82年に東京証券取引所二部に上場した。アジア進出も早く(株)ヤオハンとのタイアップも話題となった。全国1位になれたのは同業界でいち早く店舗展開に着手したからである、北田創業者の先見性と行動力が際立っていたからだ。

 ところが全国各地の雄たちが同様の全国展開が始めた。そこで企業および経営の総合力でガチンコ勝負が展開された。総合力においてはベスト電器も劣っていたのであろう。各戦線で敗北を繰り返していった。北田光男という傑物が天に召されて以降、輝きを失った。ついに2012年(株)ヤマダ電機の子会社になり下がった。

(2)福岡ではスーパー・ユニードの存在は忘れられない。もともと、呉服雑貨商「渕上商店」としてスタートしたのが1895年で歴史は古い。1958年に(株)丸栄としてスーパーマーケットチェーンの展開を本格化させた。この時期は全国どこにおいても同様の傾向がみられる。この会社は渕上兄弟で任務分担して経営に携わった。70年に(株)ユニードを設立させて全国展開に乗り出した。(株)ダイエーの本丸・大阪にも殴り込みをかけた。

 渕上兄弟の自慢と無念さを複雑に交錯した発言が記憶に残る。「ダイエーと年商さの差が2,000億円まで迫ったのは自慢であるが、あと少しでダイエーの肩を掴めると思っていたら一挙に差を離された」という発言だ。78年に福岡証券取引所、79年に大阪証券取引所に立て続けて上場した。しかし、そこまでがピークで、ダイエーの九州への大掛かりな進出にギブアップし、81年九州ダイエーと合併した。本州資本と激突すると必ず福岡資本は敗北する。

(3)「カメラのドイ」の存在を知っている人も少なくなった。創業者・土居君雄氏も豪傑であった。59年に法人化した同社の東京・本州への殴り込みは70年というから早い。75年にはヨドバシカメラとの戦争が業界を戦慄させた。89年にはカメラ専門チェーン店を出店させ、業界3位にランクされるまでになった。ところが創業者が逝去すると業績は衰退する。同社は2003年に民事再生法を申請、そして自己破産への道をたどった。

 仏壇と同様の小売業で全国制覇の野望を燃やし挫折した企業を紹介した。この3社が躍進する時期は長谷川氏にとって20~30代前半のやる気満々期に符合する。当然、「俺も仏壇業界の雄になってみせるぞ!!」と刺激を受けたのではないか。結果として、上場をはたし、業界トップへと辿りついた。紹介した先人たちは倒産消滅・強者への軍門に下る結末を迎えた。仏壇のはせがわは事業行き詰まりのエンドにはならなかったが、次の時代への対応策に辿りつけず、混迷状態を打開できずにいる。

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お仏壇のはせがわ、再生なるか

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