【熊本】城下町の面影残す中心市街地、九州第3位・熊本市の今昔――(6)
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災害に備えた多核連携都市へ
16年4月、最大震度7を観測した「熊本地震」が発生。前震と本震の2度にわたる巨大地震は、熊本県ならびに大分県、長崎県などの広範囲に甚大な被害をもたらした。発生から早5年が経過し、震災からの復旧・復興はひと段落した感があるが、被災者の生活再建や地域経済の回復なども含めて、まだ完全な復興には至っていない。
なお、熊本は過去にも、1625年7月の熊本地震や、1889年7月の熊本地震(金峰山地震)など、たびたび巨大地震に見舞われてきた地域である。また、白川をはじめとした市内を流れる河川でたびたび氾濫が発生するなど、水害の頻発地域でもある。そのため、地震や水害などの自然災害への対策は、熊本市のまちづくりにおいて、避けては通ることのできない重要事項だ。
熊本市においては16年4月、「熊本市立地適正化計画」を策定・公表した。立地適正化計画とは、急激な人口減少と高齢化が進むなかで、人々の住まいや公共施設、医療施設、商業施設などを一定の範囲内に収めて「コンパクトなまちづくり」を行うのと同時に、市街地の空洞化を防止しようとする都市政策のこと。このときに熊本市が掲げていたのは、コンパクトで持続可能な都市づくりに向けた、誰もが移動しやすく暮らしやすい「多核連携都市」という都市構造の将来像に向けたものだった。だが、奇しくもその直後に熊本地震が発生し、状況が一変した。
その後、熊本市では今年3月、立地適正化計画を改訂・公表。新たに「防災指針の策定」や「都市機能および人口密度を維持・確保するための具体的な施策」などを盛り込んだ。具体的には、災害ハザードエリアにおける新たな開発の抑制や、民間建築物などの防災機能強化、建築物の耐震改修・建替え促進、災害リスクの積極的周知などの取り組みが設定されている。今後は、今回の防災指針に基づき、災害リスクに備えた多核連携都市の実現を目指すとともに、引き続きハザード情報の収集・整理や災害リスク分析などを行い、居住誘導区域の検証やリスク回避・低減を促す施策の追加などを進めていくという。
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19年9月にはバスターミナルや住宅、オフィスなどの機能を有した複合施設「SAKURA MACHI Kumamoto」が開業。今年4月には復興のシンボルとして、熊本城天守閣の復旧工事が完了して内部の一般公開が始まったほか、新たな中心市街地となり得るポテンシャルを秘めたJR熊本駅周辺で、ランドマークとなる「アミュプラザくまもと」も開業した。また、都市圏では県内初進出の会員制大型スーパー「コストコ熊本御船」(熊本県御船町)が開業。市中心部では「まちなか再生プロジェクト」による再開発も進むほか、市内各所では旺盛なマンション・住宅の開発も進んでいる。今後、熊本地震からの完全復興が完了し、震災を乗り越えた「防災都市」としての地位を確立することで、九州の中央部に位置する拠点都市としての熊本の存在感は、ますます高まっていくだろう。
(了)
【坂田 憲治】
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