2024年04月26日( 金 )

「棲みごこち」と商業はどこまで混ざるか【1】 人口減少下にあるべき商業とは(中)

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 超大型商業施設という大味の集客装置は、どのように周辺環境に溶け込んでいくのか。「場所」「規模」「趣向」がそれぞれ少し異なる事例と比較してみたい。

KAMEIDO CLOCK(カメイドクロック)

地域共生型をめざす「カメイドクロック」HPより
地域共生型をめざす「カメイドクロック」HPより

 東京都江東区亀戸。JR総武線亀戸駅より徒歩2分。2016年に閉館した「サンストリート亀戸」の跡地に2022年4月28日開業。1939年から93年まで、第二精工舎(現・セイコーインスツル)の東京工場があった。延床面積は約5万8,000m2、店舗数は136店舗。建物地下1階から地上4階、5階と6階に約300台の駐車場を設置。また25階建(934戸)のマンション「プラウドタワー亀戸クロス」が隣接し、カメイドクロックとマンションはデッキで接続する。野村不動産グループが目指すまちづくり思想「BE UNITED構想」(※)のコミュニティ商業施設。

※BE UNITED構想とは~人々が「住まい」「働き」「集い」「憩う」多機能かつ高い利便性を兼ね備えた「都市型コンパクトタウン」の開発。街を開くことで始まるオープン型コミュニティにより、共創するまちづくりを目指すというもの。ハードとしてのまちづくりに加え、個人や団体、学校や企業など多種多様なプレイヤーによるソフトとしての連携基盤も有する。

 地域共生の取り組みとして、カメイドクロック内に施設・地域の情報発信拠点「カメテレ」と、コミュニティスペース「カメラボ」を設置。カメテレは公式YouTubeチャンネルで、施設内に撮影・編集スタジオを設け、開業直後は出店テナントによるワークショップなど、来店客との接点となるイベントができる。6月からは一般利用の予約を開始し、昔ながらの公民館のように地域の人が主導するイベントが行われることによる、人同士のつながり・交流を生み出す場となるようだ。

 エンターテインメントを発信する屋外「カメクロステージ」、大型ビジョンを備えた屋内「カメクロコート」、e-スポーツを楽しめる「カメスポ」など、バラエティーに富んだスペースも展開。亀戸駅側・京葉道路に接する屋外スペース「カメクロプラザ」では、マルシェをはじめ多彩なイベントが開催予定だ。隣接するプラウドタワー亀戸クロス ゲートタワー1階には、CCCと野村不動産の協働による「SHARE LOUNGE 亀戸 with H1T」が設置され、カフェとしてもワークスペースとしても利用できるラウンジや、ボックス型ワークスペースも有する。

 親しみやすい横丁の雰囲気を残した「カメクロ横丁」は、1階路面に配置し、グランドレベルでちょい飲みを誘発、人々の止まり木となるような仕掛けをしている。その通りを挟んだ反対面にマンションのエントランス、その手前ゲートがSHARE LOUNGE。働く人だけでなく、子どもや学生、主婦などさまざまな人たちが使えるカフェスペースになっている。まさに衣食住と働く場所の近接をコンセプトに、日々の暮らしのなかに溶け込む環境を目指そうとしている動線が読み取れた。

 近接する老舗和菓子店の2号店をサテライトショップとして積極誘致するなど、他店競合ではなく共創共生という生き方を見出す。そこを使う人とそこで働く人、双方にとってこの場所・この地域が自分のものであるという誇りが内包されていけば、このエリアはとても魅力的なところになるのではないか。そんなコンテンツが集まっているように見える。


松岡 秀樹 氏<プロフィール>
松岡 秀樹
(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。

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