2024年05月05日( 日 )

「棲みごこち」と商業はどこまで混ざるか【1】 人口減少下にあるべき商業とは(中)

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商業をめぐる資本構図

 商業をめぐる「巨大資本vs小資本」という構図はいまだに続いているとは思うが、2000年代初頭から小資本でオフィスをリノベーションして住宅やコワーキングスペースにするとか、古民家をリノベーションしてカフェにする事例など、都市の隙間や空き家を活用する試みは数多い。ただ、これらは都市における「点」の話であって、それから20年以上経過し、個々の点をネットワーク化していく流れが出てきている。

 今まで都市再開発というとデベロッパーや商業施設が主役だったが、ウェブプラットフォーム企業(Airbnb、スペースマーケット)という新しいプレイヤーが参入してきたことで、都市をめぐる資本の牛耳り方が変わってきている。つまり、ウェブプラットフォームを介在させることで、都市の見方や使い方が変わってきているのだ。従来、個々の会社やテナントが個別にウェブサイトを構えてやっていたことを、それらを介してネットワーク化していくようになってきた。アルベルゴ・ディフーゾの考え方のように、点在する空間、地域のアセットをネットワークでつなぎ、経営的ガバナンスを効かせることで施設単体ではない、中域帯での商・住環境複合エリアを開発する動きも徐々に広まっていくだろう。

都市の使い方が変わる(スペースマーケットHPより)
都市の使い方が変わる(スペースマーケットHPより)

【事例②】ビル1棟でも都市は語れる

 古来より文化の芽吹く土地として、暮らしと仕事が交わってきた京都。多様な働き方が増えていく現代で、生活と制作の基盤、両方を手に入れられる職住一体型の暮らし方の提案だ。
 学生を除く若手アーティストがまず直面する問題は、制作場所。継続的な制作・発表を行うためには、制作場所の確保が必須となる。京都を拠点とする若手アーティストが、住みながら作品制作・発表ができる滞在型複合施設「KAGANHOTEL」では、創作・仕事・暮らしが1つの建物のなかでシームレスに交わっている。

河岸ホテル(KAGANHOTEL)

創作・仕事・暮らし「河岸ホテル」
創作・仕事・暮らし「河岸ホテル」

 京都を拠点に活動するアーティストやクリエイターが居住できる共同住居に、ホテル、ホステル、制作アトリエ、ギャラリー、飲食店が併設した複合施設。若手アーティストが日常的に活躍できる環境づくりと、京都の新たなカルチャーの発信を目的としている。


松岡 秀樹 氏<プロフィール>
松岡 秀樹
(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。

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