2024年06月15日( 土 )

喫緊の課題「人材確保」へ向けた総合的取り組み

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建設産業専門団体九州地区連合会
会長 杉山 秀彦 氏
(一社)福岡県建設専門工事業団体連合会
会長


高等学校における出前授業を再開

杉山 秀彦 氏
杉山 秀彦 氏

    ──建設業界では、職人不足が深刻化しています。

 杉山 対策の1つとして昨年、これまでコロナ禍で中止していた「学校キャラバン」(出前授業)の活動を再開しました。昨年は、福岡県立鞍手竜徳高等学校(5月16日、総合学科工業技術系列<工業全般コース>3年生50人)と、福岡第一高等学校(6月22日、工業課1~3年生26人)で実施することができました。このうち、鞍手竜徳高等学校で行われた授業の内容は足場設置、型枠組立、鉄筋ガス圧接、電気、解体の作業体験と意見交換会です。

 生徒さんからは、「思っていたより嫌な職業ではない(ことがわかった)」といった就業に向けた前向きな意見があり、アンケートでも「ほかの職業に興味があったが、建設業にも興味が湧いてきた」が最多になるなど、こちらも前向きな回答が得られました。先生方からも「実際に働く現場の人と関われる機会はとても重要」との意見をいただきました。

 こうした取り組みの成果があったからでしょうか、同高等学校から建設産業専門団体九州地区連合会(以下、建専連九州)に加盟する2社において合計6人のインターンを受け入れることができました。少子化の影響で工業系の高等学校の数も減っているという厳しい状況にあるなかで、建設業の魅力を伝えるための地道で継続的な活動の重要性が、より高まっています。出前授業については今後、さらに地域を広げるなど、実施する回数を増やそうと考えています。

外国人や女性がより働きやすい環境づくりを

 ──このほかに考えられる対策は、何があるのでしょうか。

 杉山 外国人実習生の受け入れ、女性や高齢者の就業支援などが挙げられます。外国人実習生については、増加傾向にあったベトナムからの受け入れが滞る可能性が指摘されています。自国での賃金水準が上がったことや円安などがその要因です。ベトナム以外の国からの受け入れを模索する必要があるでしょう。就業体制見直しなど、国への働きかけを強めていきたいと考えています。

 女性や高齢者については、施工図面の作成などのオフィスワークはもちろん、重機のオペレータや施工管理など、体力がなくてもできる業務での活躍が期待できます。能力開発などに取り組むことで、就業者を増やせる余地もあります。こういった取り組みは、建専連九州でも進めてまいります。

 余談ですが、土木分野では現場で活躍する女性を「どぼじょ(土木女子)」と称していますが、これはいかがなものでしょうか。女性が働きやすい環境をつくるため、建築分野の「けんせつ小町」のようなポジティブな表現に換えるなどの、意識変革が求められているように思います。

公共工事で変わりつつある専門工事業者への認識

 杉山 建設業は、3K「きつい・汚い・危険」な業種と見られがちです。他業種に比べて低い賃金の改善、週休2日制の導入などといった働き方改革を推進し、新3K「給料高い、休日取れる、希望持てる」という、働きがいがある業界イメージへの転換を図る必要性があります。建専連九州では、その実現に向けて努力していることを出前授業などで地道にPRしていきます。

 一方で、既存就業者の離職に歯止めをかけることも大切です。このため、今後の受注に影響するインボイス制度についての周知徹底を図るため、とくに一人親方などの事業者への対応を粘り強く働きかけてまいります。

 ──職人不足については、元請の理解がなければ状況を変えられません。

 杉山 たしかにそうですが、公共工事では様相が変わりつつあります。それを象徴するのが、国土交通省九州地方整備局の職員の方々を対象にした出前授業でした。藤巻局長との意見交換会(7月)における「専門工事業の特有の課題がわかっていない」との意見を受けたもので、先方からの実施要請に対応したものです。

 九州技術研究所(久留米市高野)において2022年12月2日に実施したのですが、「専門工事業の仕事について『知らない』をなくす」をテーマに、建設業・専門工事業の現状と課題、施工体制に関する座学と、専門工事業(とび・土工、型枠大工、解体)の職種体験が行われました。男性17名、女性3名の計20人にご参加いただき、「実際に体験することで、現場の苦労と専門工事の技術のすごさを感じた」「安易に出来形評価など採点できないと感じた」などといった意見をいただきました。

 初めての取り組みでしたが、国や自治体の事業については、私たちが置かれる賃金や働き方などの環境を改善する機運が高まりつつあることを表しているのではないでしょうか。民間工事の環境改善についても、建専連九州では改善に向けて粘り強く働きかけをしていきます。

【田中 直輝】


<プロフィール>
杉山 秀彦
(すぎやま・ひでひこ)
佐賀県生まれ。大学進学で上京。1970年に(株)杉山組(現・(株)スギヤマ)に入社。79年、34歳で代表取締役に就任。2010年に代表交代し、会長へ。専門工事業の地位向上、待遇改善のため、複数の公職リーダーを務め、多岐に渡る活動を展開している。

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