2024年05月20日( 月 )

博多と天神つなぐリバーサイド春吉(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

博多と天神双方の利点を享受

那珂川
那珂川

 福岡市中央区春吉は、市の2大都心である博多と天神の中間に位置するエリア。福岡市地下鉄の博多・中洲川端・天神の各駅から徒歩20分圏内で、博多・天神間を結ぶ市の主要道路の1つである国体道路も走る。

 また、春吉橋から那珂川沿いに住吉方面へ歩いていけば、複合商業施設・キャナルシティ博多があり、反対側の中洲方面に歩いていけば、高級感あふれる料亭やレストラン、Barなどが軒を連ねる西中洲エリアがある。どちらへも徒歩5分程度で到着可能であり、西中洲エリアからさらに足を伸ばせば、フォトスポットにもなっている一蘭本社総本店があるほか、都心のオアシス・天神中央公園から天神エリアへと入っていける。

 夜になると、那珂川沿いでは屋台が営業を始めるため、福岡観光の醍醐味でもある、活気にあふれたナイトライフを身近で体験することも可能だ。

 ちなみに春吉校区は、住む場所としての人気も高く、中央区では舞鶴、平尾、警固に次ぐ1万1,619世帯が暮らしている(福岡市公表『登録人口(校区別)2022年12月末時点』参照)。

 春吉橋を起点に、那珂川沿いの動線を紹介したが、博多・中洲・天神の各エリアはそれぞれ滞留人口を生み出す顔となる施設・店舗が多く、エリア間の交流人口の増加に関してはまだ余地が残されている。老朽化への対応から架け替えが実施された春吉橋では、架け替え工事に際して設置された迂回路橋と、隣接する清流公園との一体的な空間活用が進められている。文字通り、周辺エリアとの架け橋として、交流人口創出、回遊性の向上が期待されている。

春吉橋架け替えによる空間活用

春吉橋
春吉橋

    春吉橋の歴史は古い。1640(寛永17)年ごろ、春吉村に家をもらい住み着いた足軽が、中洲へ渡るために架けた橋を起源とする話や、1737(元文2)年に本格的な普請(ふしん:社会基盤を地域住民でつくり、維持していくこと)が行われたとの記録も残っている。

 架け替え工事前の旧春吉橋は1948年、福岡県を中心に開催された第3回国民体育大会を契機とした、国体道路(博多区祇園町から中央区大濠公園までの約4.5km)建設に合わせて整備が始まり、その後、61年に架設された。経年劣化により、木杭の基礎など下部工の損傷が顕著となるなか、2013年に国土交通省主導で架替事業がスタート。旧春吉橋の撤去工事(若築建設・落札額3億8,210万円(税別))や新春吉橋下部工(A2)工事(松山建設・落札額1億8,600万円(同))など、約50億円の予算が投じられた。 

 架替事業は、22年4月、迂回路橋から新春吉橋への切り替えが完了。現在、迂回路橋の舗装工事(施工:熊川工業)が行われている。新春吉橋の橋名板には、地元博多であることと、父親の名前が同じ春吉という縁もあり、森田一義氏(タモリさん)が揮毫(きごう:毛筆で絵や文字を書くこと)し、話題を呼んだ。

 迂回路橋は橋長約64m、幅約23m。敷地面積は、橋上の約1,500m2と左岸側橋詰部分約300m2を合わせた約1,800m2で、今後は地域住民や地元業者との交流イベントなどを行う賑わい空間として利用される。19年には、試行イベントとして「令春橋宴祭(れいしゅんきょうえんさい)」が「千年夜市(清流公園が舞台のイベント)」とのコラボ企画として開催された。令春橋宴祭には地元飲食店など30店舗が参加したほか、音楽ライブなども行われ、多くの人たちが新しい空間での新しい祭りを楽しんだ。

 迂回路橋を仮設橋ではなく、永久橋として残すかたちで架替事業を進めたことで、イベント開催を通じた誘客効果の発揮など、春吉橋には交通インフラにとどまらない利用価値が付加された。周辺には博多祇園山笠のスタート地点としても知られる櫛田神社や川端通商店街、キャナルシティ博多などの商業施設も充実しており、相互作用により、来福観光客の消費促進も見込める。

 また、櫛田神社側では、福岡市地下鉄七隈線・櫛田神社前駅が23年3月27日開業予定となっている。春吉橋周辺の歩行者交通量は平日(午前7時~午後8時)約8,000人、休日(同)約1万3,000人(市公表『歩行者交通量』参照)だが、櫛田神社前駅の開業によって増加する可能性が高く、併せて春吉のエリアブランドは高まっていくものと推測される。

春吉橋

(つづく)

【代 源太朗】

(後)

月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。

ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)

関連記事