2024年04月27日( 土 )

東ヨーロッパには何があるのだろう(1)

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 雪に縁のない国に生まれ育った人間にとって、北の国に旅立つというのは南国に旅立つときの少し心躍る思いとは違ういささか硬質の何かが気持ちの中に湧いてくる。しかもそこが北海道の最北端よりはるか北の北緯60度となると未知への思いはさらに複雑になる。

バスで飛行機に向かう。針葉樹の林の向こうには緑一色の原野が続く<

バスで飛行機に向かう。針葉樹の林の向こうには緑一色の原野が続く

 夏の期間だけの福岡から飛ぶフィンエア、ヘルシンキ直行便。国際線の高度1万1,000メートル辺りでは東に向かって時速250キロ、秒速460メートルの風が吹いている。ヨーロッパの場合行きは向かい、帰りは追い風。見えない風の存在が飛行時間で1時間の差となって現れる。直線距離で約7,600キロ。太陽を追いかけ、福岡を午前9時30分出発。韓半島、ロシア上空を通過してヘルシンキ到着は現地時間午後1時55分。飛行時間は10時間余り。

 乗り換え客と到着客でごった返す午後のヴァンタ―空港。ヨーロッパ屈指のハブ空港の上に広がるヘルシンキの空の青は冷たく、深く、澄んでいる。南のそれとは明らかに異質だ。到着ロビーから見える風景はただ平べったく、縁取るように針葉樹の林が滑走路を囲み、それが切れた辺りからは緑の野が地平に向かって果てしなく続いている。

 中心市街地から10数キロメートルのところにあるヘルシンキ・ヴァンダ―空港。ここで入国手続きを済ませればシェンゲン協定によりヨーロッパの多くの国境をパスポート審査なしで通過できる。シェンゲン協定加盟国は26カ国。英国などEU加盟国の中で5カ国が不参加だが、逆にスイスなどEU非加盟の4カ国が協定に加わっている。

 パスポート審査の後、エンブラエル190のリトアニアのヴィリニュス行きに乗り換える。100席程度の小型リージョナルジェットだ。

空から見るヘルシンキ。まさに森と湖の国を実感<

空から見るヘルシンキ。まさに森と湖の国を実感

 今は夏時間、サマータイム期間の時差は6時間、文字盤の6と12がちょうど逆。腕時計を反対にして12時と6時を逆に見るようにすれば時間を合わせなくてもよい。最初はピンとこないがすぐに慣れる。ちなみに冬時間の時差は7時間。

 バスに乗ってヴィリュニス行きの駐機場所に向かう。地上気温は現在26度。どちらかというと暑い。この地の6月初めの平均気温は12度程度、高くてもせいぜい18度程度と予想していたが…。

 もっとも過去の5月最高気温には29.6度という年があり、最低気温はマイナス4.8度という記録もあるから取り立ててびっくりすることではないかもしれない。常識と平均はディテールにおいて、時として意味を持たないのだ。この調子なら万が一とトランクに忍ばせたダウンジャケットの出番はなさそうだ。

バルトの海

 離陸するとすぐ眼下にバルト海が見える。海面積約40万平方キロメートル。スカンジナビア半島とヨーロッパ大陸に閉じ込められたようなこの海はその内なる水が入れ替わるのに30年以上を要するのだという。平均水温は3.9度。年によってはその北半分が結氷するというこの海はその蒸発力の弱さに加えてその4倍の流域面積を持つ9本の河川が注ぎ込む淡水によって、塩分が普通の海より20%も少ない。いわゆる甘い海だ。

(つづく)

<プロフィール>
101104_kanbe神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。

 
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