2024年04月27日( 土 )

【豊洲市場訴訟】KYB免震不正に小池都知事がKYな発言

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(協)建築構造調査機構 代表理事 仲盛 昭二 氏

 東京都豊洲市場の建築基準法令違反をめぐる「平成30年(行ウ)第261号豊洲市場違法建築物除却命令等義務付請求事件」の第2回目の口頭弁論は11月1日、東京地裁419号法廷で開廷する予定である。これを前に、被告である東京都の小池百合子都知事が、東京地裁の論理破綻を浮き彫りにするKY(空気・読めない)な発言を行っていた。建築構造の専門家として解説をしておきたい。

都の建築物に対する都の是正命令は不可?

 この訴訟と並行して申し立てられていた「仮の使用禁止命令義務付け訴訟」は10月5日に却下された。東京都の主張を取り入れたその理由は「特定行政庁たる東京都知事から本件建築物を所有する東京都の長たる東京都知事に対する『通知』および『要請』は、法的にできない」という不思議な理由であった。

この却下の理由を簡単にいえば、「違法な建築物や地震がきたら倒壊する可能性のある建物を東京都が建て、それを東京都が所有している場合は、東京都が その建物について 危ないから解体しろとか補強工事を行え と命令や要請をする法的根拠がない」ということである。

 これが民間の建築物であれば、小池都知事が建物の所有者に対し、除却や補強などの是正を命令することができるのであるが、東京都が所有する建築物であれば、その命令ができないという論理となっている。

 11月1日に第2回目の口頭弁論が行われる裁判は、「豊洲市場建築の責任者である小池都知事が 建物の所有者である小池都知事に対して 違法で危険な建築物の徐却を命令することを求める裁判」であり、仮の義務付け申立は、「本訴の判決が出るまでの間 建築基準法令違反の疑いがある豊洲市場を【使用禁止】にせよ」ということを求める申立であった。

 仮の使用禁止命令義務付け申立が却下されたが、却下の決定をした裁判官は本訴の裁判官と同一人物となっており、恣意的なものを感じざるを得ない。

 東京都が建築し所有している建築物であれば、たとえ違法で危険な建築物であっても、東京都自身が是正をしたり、自らに是正を要請することをしたりせずに放置しても構わないということになる。その建築物を使用する都民の生命が犠牲になるとしても関知しないのか。

 仲卸業者の申立を却下した裁判所の論理は、完全に破綻しており、論理的には完全に原告(申立人)の主張のほうが勝っている。小池東京都知事は、KYBの免震・制震装置のデータ改ざん事件について下記のようにコメントしている。

 「KYBが免震・制振で検査データの書き換えで、大臣認定などの不適合な製品の出荷があった事実を公表した件については、大規模地震から都民・国民の生命、そして財産を守るために、都を始め全国的に建築物の耐震化など強力に推進いたしているが、本事案がそういう中で発生したことは極めて遺憾。

 国土交通省の公表資料によれば、震度6強から7程度の地震に対しては倒壊の恐れはないと言われているが、そもそも検査データの書き換えということは、建築物の安全・安心に対する信頼を、それこそ揺るがすものであり、あってはならないことである。メーカー側は、深く反省していただきたい。そして、都民・国民の生命と財産を守るという自覚、そして責任をもって、オイルダンパーの交換や、その他必要な対策を速やかに行ってほしいと考えている」

 小池都知事は、免震・制震ダンパーの速やかな交換を求めているが、豊洲市場に関する理屈を当てはめれば、東京都所有の施設については、免震・制震ダンパーの交換を命じることができないと解釈できる。
 さらに拡大解釈すれば、東京都が建築確認済証を交付した建築物については、たとえ違法性があっても、是正をする必要はないという解釈を示したことになる。そうなれば、これまで東京都が是正を指導してきた事実と相反することとなり、収拾がつかなくなる。

 従って、東京地裁は、建築基準法令違反の事実などの内容に立ち入らずに、「行政の長たる都知事が 所有者である都知事に使用禁止を要請できない」という不可思議な入口問答だけで逃げたのであるが、この破綻した論理は、原告(申立人)が即時抗告をしたことにより、高裁において審理が続けられる。この案件に関しては最高裁の判断を仰ぐことが必要ではないかと私は考えている。なぜならば、地裁や高裁の裁判官と異なり、最高裁の裁判官は内部事情に忖度する必要がないからである。

 行政のみが違法行為が許されるという国家は、国民の目から見れば異常である。異常なこのような背景も含めて、11月1日の本裁判の第2回目の口頭弁論が注目されることなろう。

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