2024年04月27日( 土 )

法衣を着た公務員・裁判官の暴挙

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(協)建築構造調査機構 代表理事 仲盛 昭二 氏

 東京都豊洲市場の建築基準法令違反に関する裁判については既報(豊洲市場の「闇」に光差す!東京高裁「抗告許可」決定~技術専門家が解説)の通りです。

 審理に入らずに原告の請求を棄却しようとする東京地裁・清水裁判長ら裁判官に対して、原告(市場仲卸業者)側代理人弁護士の堪忍袋の尾が切れ「裁判官忌避」を申し立てる事態に発展しました。

 東京地裁の裁判官が、なぜこのような強引な行動(審理にすら入ろうとせず再度、訴えの棄却を狙う)行動に出たのか?そこには(すでに稼働している豊洲市場の違法性や安全性を審理して、違法性が明るみに出ると社会的大混乱を招く)という行政への忖度があったとしか考えられません。 

 本裁判と並行して申し立てられていた「仮の使用禁止命令義務付け」について東京地裁は「申立却下」、申立人(市場仲卸業者)が抗告するも、東京高裁は「抗告棄却」という決定をしました。この決定に対し、申立人(市場仲卸業者)側は最高裁へ特別抗告することを申し立てたところ、東京高裁は特別抗告を許可しました。

 ひらたくいえば、【差し戻し審理決定】なのです。本来、東京地裁は、このような状況を踏まえた上で、本訴訟の審理を進めなければならないはずですが、裁判官はまるで臭いものに蓋をするように、慌てて本裁判の審理を回避して 本裁判を閉じようと目論んだのです。

 この口頭弁論の前日、豊洲市場に関して、東京のNPO法人【建築ネットワークセンター】の方から素朴な質問が届きました。質問内容は『豊洲市場の床が非常に揺れる。床のひび割れも激しいが、どのような原因で このような現象が起きているのか? 構造上の安全性や建築基準法上の問題はないのでしょうか?』という内容でした。

 この質問に対して、私は以下のように回答しています。

 床の揺れが大きい原因は、1階の柱脚(1階柱の最下部の)形式による保有水平耐力計 算の誤り(偽装)の問題と、建物が揺れた際の水平方向の変位(層間変位)が極端に大きいことに起因しているのです。

 大地震が発生した場合の耐震強度を確認する保有水平耐力計算における重大な係数の1つに「構造特性係数(Ds 値)」というものがあります。 

 豊洲市場水産仲卸売場棟の場合、1階の柱脚が埋め込まれていないので、1階の Ds 値は鉄筋コンクリート造(RC 造)の値(厳しい値)により保有水平耐力計算を行わなけれ ばならないのですが、実際には、【禁じ手】の鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC 造)の Ds 値(緩い値) により、意図的に偽装され、構造計算されているので、本来の耐震強度よりも強度があるかのように粉飾されています。

 また、1階の柱脚の鉄筋本数も必要鉄筋量の50%程度となっているので、建物にとって最も重要な足元が極端な強度不足に陥っています。
これらの強度不足・規準違反が、結果的に質問の『床の揺れ』の原因の1つにつながっています。

 もう1つの最重要原因は【層間変形角】が基準法を大きく下回り、異常に大きいことです。建築基準法で定められている層間変形角の制限は「1/200」です。豊洲市場水産仲卸売場棟の層間変形角は最大で「1/151」となっており、建築基準法を大きく逸脱しています。例外規定として、仕上げ材が追従できる条件において、鉄骨造の場合に限り1/150までの緩和規定はありますが、豊洲のこの建物は れっきとした鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)です。コンクリート系であるSRC造においては一般的に層間変形角が1/800を下回ることはあまりあり得ません。

 本来であれば、この層間変位は地震時に起こる現象ですが、日常的にもすでにこの兆候が起きている証です。

 「床が揺れる→層間変位に起因する影響」が如実に出ています。 このまま建物を長く使用していると、構造体の材料疲労により急速に脆性破壊に進む可能性が大と思われます。

 設計者である日本一の設計事務所である日建設計は、耐震強度不足などに関しても、さらに輪を掛けて幼稚な虚偽の答弁でごまかしています。

 あろうことか、建築構造設計のプロ集団?であるJSCAのトップたちまでもが 簡単に日建設計のトリック説明に騙されている(意図的に騙されるしかなかったのでしょう)のです。

 この問題は日本の建築確認制度の根幹を揺るがす問題なので、証人尋問を介して公開の場で真実を明らかにしなければなりません!

 これら日建設計が犯した設計偽装について、私は設計者本人である日建設計に対して再三質問をしてきましたが、いまだに回答をいただいておりません。

 日建設計は国内最大手の設計事務所であり、設計業界に対しても大きな影響力をもっています。そのような地位にある日建設計の設計偽装は不可解としかいいようがありませんが、しっかりと説明責任を公の場で、はたしていただきたいと思います。

 逆に日建設計・JSCA・行政が、このような違法建築物を放置するのであれば、法規準を順守している民間の建築物は、過大設計かつ不経済設計をして、施主に不必要な過大な負担を掛けていることになるのではないでしょうか? 

 もし、この行政(裁判所を含む)の暴挙が許されるのであれば、建築確認制度そのものを撤廃して、届出制にするべきです!

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