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2019年04月04日 09:32

【特別レポート】九電工関係者による傷害致死事件の真相を探る~「空白の15時間」をめぐり、囁かれる噂(2)

昨年9月、長崎県五島列島の北端に浮かぶ小さな島で起きた傷害致死事件。加害者とされる男性が自首したにもかかわらずなぜかすぐに釈放され、いくつも不明な点が残されたまま捜査が進展している様子もない。遺族らはやりきれない気持ちを抱え、「疑い出したらきりがない。何を信じていいのかわからない」状態でほったらかしにされたままだ。現地マスコミがまったく報じない、不可解な事件の背景を追った。

既報(1)

空白の15時間―錯綜する情報

 まず、事件関係者への取材や救急搬送された際に記録された資料、さらに死体検案書などから、暴行があった当日からNさんが亡くなった日までの事実関係を追ってみたい。

九電工関係者4人(Nさんを含
む)が生活を共にしていた宿舎

9月11日(火): 亡くなったNさんと暴行加害者とされるIは、九電工が宇久島で進めているメガソーラー(太陽光発電)事業の現地担当者として宇久島の宇久平港そばにある宿舎「宇久島宿」で共同生活を送っていた。一緒に暮らしていたのは、Iの恋人とされる女性とMという若い男性の、合わせて4人。4人は11日の夕方ごろから、メガソーラー事業に協力的な島の有力者宅で開かれた宴会に招かれていた。有力者宅に備えられたホームバーなどでお酒を飲んだとされ、Nさんの死亡した後に警察の鑑識が同宅で指紋などを採取している現場を近所の人が目撃している。

 死体検案書によれば、Nさんが暴行を受けて頭部などに外傷を負ったのは、4人が有力者宅から宇久島宿に戻った後の、同日午後10時30分ごろとされている(ただしこれはNさんの救急搬送を依頼したIらから聞き取った情報が加味されたもの)。

 宴会が終わって宇久島宿に戻った4人の間に何が起きたのか。情報はここから錯綜を始める。

【情報その1】某全国紙記者が警察関係者から聞いた話
4人は有力者宅での宴会から戻った後、宇久平港で酒盛りをしていた。もともと、NさんがIの恋人に手を出したことがあり、IはNさんのことを良く思っていなかった。酒に酔ったNさんが海に落ちそうになったのをIが助けようとしたところ、日頃の行き違いから勘違いしたNさんが殴りかかってきた。Iはそれに応酬するかたちで殴り、倒れたNさんが頭を打ってしまった。

【情報その2】父親危篤の知らせを受けたNさんの息子が、翌12日に博多港から宇久島に向かう船中で九電工関係者K氏から受けた説明――息子は「九電工本部にあがってきた報告書」と説明を受けたという。この段階では、IはNさんを殴ったことを自供していない(しかし、後の取材でK氏は、「船中で息子さんにそんな説明をしたことはない」と否定している)。
島民宅で飲み会があり、父(Nさん)がおみやげに持っていった強いお酒を空けて、父がけっこう酔ってしまったということでした。その後に寮に帰ったら父が飲み足りないと駄々をこねて、2階の部屋で寝るようにみんなで退出を促したそうです。そのあと2階に父がいないのに気付いて、探しに出た人が港で父を発見したということでした。その後、父を車に乗せて付き添いをつけて朝まで寝かせた。朝も起きなかったので様子を見る人を置いて仕事に出た。昼になっても起きず、父が嘔吐して瞳孔もおかしかったのでそのとき初めて救急車を呼んだということでした。

【情報その3】Nさんの息子が島から戻った後に、長崎県警から受けた説明
 宇久島宿に帰った後に、父(Nさん)が飲み足りないなどと言い、女性に抱き着いたらしい。それを見たIが父を蹴ったりした。父の胸を踏みつけたりもしたらしい。酔いすぎたから(父は)部屋で寝ろという話になって、宿の1階の食事スペースから出された。その後で女性が父に胸を触られたと言い出して、怒ったIが1人で2階に上がっていった。そうしたら2階にいるはずの父がいなくなっていたということで、Iと若い男性Mが探しに出た。その後、Iが父を港で発見して揉めたという話だった。ケンカになって殴ったようだ、と。

Nさんが転倒して頭を打ったとされる場所。
夜間は外灯が煌々と照らしている

9月12日(水): 死体検案書に書かれている外傷を負った時刻が正しければ、11日の午後10時30分ごろに殴り倒されて頭を打ったNさんは、12日のお昼ごろに救急搬送されるまで、宿の駐車場に停めた車の中で寝かされていたという(朝までは若手のMが横に寝ていたという情報もある)。Nさんが殴られたとされる時刻から翌昼までは加害者ら以外にほとんど目撃者はおらず、実質的には「空白の15時間」だ。

 朝になっても目を覚まさないNさんを置いてIやMらは仕事に出かけ、昼頃になって戻ったIらは、嘔吐するなどしていたNさんを見て午後1時46分に、宿から徒歩圏内にある宇久救急隊に救急搬送を要請。その際にIらは救急隊に対して「昨日午後6時30分ごろから飲酒(アルコール度数60度の酒を1ℓ弱)し、現時刻まで起きないため救急搬送を要請した。飲酒中(夜11時ごろ)に転倒し、顔を打った」などと説明していた。

Nさんが搬送された宇久診療所

 Nさんが佐世保市総合医療センター宇久診療所に搬送されてからおよそ2時間後の午後4時すぎから、佐賀県鳥栖市に住むNさんの息子の携帯電話には、九電工関係者から電話とメールが立て続けに入っていた。仕事がひと段落した午後5時ごろに電話に出た息子は「お父さんが怪我をした。島の診療所に電話してほしい」という指示に従って診療所に電話をかけ、父親が危篤状態にあることを告げられた。半信半疑のまま息子は祖母と一緒に博多港に向かい、迎えに来ていた九電工関係者K氏とともに宇久島行きのフェリー「太古丸」で午後11時45分に博多港を出港した。

9月13日(木): Nさんの息子らが博多港を出港した約3時間後の午前2時47分、宇久診療所でNさんの死亡が確認された。その約1時間後の午前3時55分ごろ、太古丸が宇久平港に到着し、Nさんの息子はなんと加害者とされるIが運転する車で宇久診療所に向かい、父親の亡骸と対面。Nさんの息子は医師から「脳挫傷で、脳が衝撃を受けたために片側が腫れている」という説明を受け、「状況がおかしいので事件性もある。警察の検視が必要なので(午前)10時くらいまで待ってほしい」と言われたという。午前7時ごろに、Nさんと働いていたという中年女性が病室に来て、「Nさんは優しくて、よくしてもらった」などとNさんの島での様子などを聞いた。

 午前10時ごろから検視が始まり、警察などから事情聴取などを受けたが、昼ごろになって警察は「様子がおかしい。さらに調べる必要がある」などと話す。息子と祖母は午後2時くらいに島のホテルで九電工関係者らと食事をとったが、この際にもIらが同席していた可能性が高い。
午後3時ごろ、Nさんの息子は警察から促されて父親が亡くなったとされる現場を案内された。午後5時ごろ、Nさんの怪我について「倒れただけでついた傷だとは断定できない」ため、さらに解剖が必要になったとの説明を受けた。その夜、息子と祖母は島のホテルに宿泊し、その夜のうちにNさんの遺体は捜査を担当する上五島警察署に運ばれている。

9月14日(金): Nさんの息子と祖母は、朝のフェリーで佐世保に移動。Nさんは佐世保市内でも働いていたため、借りていた部屋の荷物などをまとめた。息子は、フェリーが佐世保に着いたころに「Iが自首した」と、同行した九電工関係者K氏から伝えられたという。息子はK氏から「Iが九電工関係者に『自分が殴った』と話したため、自首を勧めた」と伝えられたと話しているが、K氏はなぜか、「そんな事実はない。自分は佐世保に着いた時点で何も知らなかった」と否定している。

 息子と祖母は、佐世保から福岡に帰るという九電工関係者の車に同乗して鳥栖まで送ってもらっている。その車内で、かつてNさんと働いていたという人物が「Nさんはお酒をよく飲む人だったが、乱れる姿を見たことがない。信じられない」などと話していたという。

9月15日(土): 通夜。午前中に、Nさんの弟が遺体を引き取りに長崎へ。

9月16日(日): 葬儀。火葬場で息子に九電工から連絡があり、「事件として扱われることになった」旨の報告を受ける。「『父が酔ったときに女性に抱き着いたことで揉めたようだ』と話していた」(息子談)という。

【特別取材班】
(つづく)

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