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2020年01月24日 11:17

米中貿易「第一段階」合意に隠された“真の対立点”(前編)

 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、2020年1月24日付の記事を紹介する。


 1月15日に署名された米中合意の「第一段階」文書には双方が勝利宣言できるようにするため、本質的な対立点(すなわち、今後の火種)は意図的に外されていた。そのため、表向きには「“関税合戦”という報復の応酬」には、ひとまず歯止めがかかったようだ。

 IMFが警鐘を鳴らしていたように、「このまま米中貿易戦争が続けば、2020年後半には世界が深刻なリセッションに陥る」リスクもあったわけだが、両国がようやく合意文書に署名できたことで、米中のみならず世界経済が体制立て直しのチャンスを手にすることができたといえよう。

 しかし、安心はできない。なぜなら、アメリカが意図する「中国の先端技術の押さえ込み」と中国が目論む「先端技術(AI、5G、サイバー)による世界制覇」をめぐる対立構造は温存されたままであるからだ。21世紀後半に向けての指導権争いの行方を左右するわけで、この技術覇権争いこそが米中の真の対立点であり、今後も一層過熱するに違いない。

 思い起こせば、1980年代、当時のレーガン大統領は日本を名指しで「アメリカの知的財産権を侵害している。アメリカの未来を略奪する怪しからん輩だ」と非難の声を上げていたものだ。何やら、トランプ政権が最近の中国を敵視する際の表現と似通っているではないか。時代が変わり、日本に代わり、中国が「アメリカの地位を脅かす存在」として台頭してきたということだろう。とはいえ、アメリカの国債を1兆ドル以上も買い支え、アメリカを国家破綻から押しとどめている立役者は、今では中国がNO1である。

 トランプ大統領は「アメリカによる関税強化政策が成功し、かつてない譲歩を中国から引き出した。これは史上最大の契約署名だ」と自画自賛。一方、中国の劉鶴副首相は習近平国家主席のメッセージを読み上げ、「中国がアメリカと合意したことで、世界レベルで貿易の自由化が保証された」と、中国の貢献ぶりをアッピール。

 加えて、「この合意の内容はアメリカ以外の貿易相手国にも適用される」と述べ、中国が日本などと進める世界最大の自由貿易協定RCEPへの波及効果にも含みを持たせた。昨年12月に中国の成都で開かれた日中韓首脳会議でも、李克強首相は「自由貿易の維持は中国の考え方で、世界の平和にとっても有益だ」と述べていた。「アメリカ・ファースト」に邁進するアメリカとの違いを強調しようとする中国の思惑が読み取れる。

 これまで、アメリカは事あるごとに、中国の不公正な貿易慣習や国営企業の優遇政策を問題視してきた。何もトランプ大統領になってから始まったわけではない。過去20年にわたり、アメリカの歴代政権は中国による「知的財産権保護の不十分さ」「国営企業優遇による競争排除」「補助金供与による低コスト生産とダンピング輸出」を繰り返し批判してきた。とはいえ、「もうこれ以上、中国に好き勝手させない」と大幅な関税をかけ、中国の姿勢を改めさせようと本気で宣戦布告に及んだのはトランプ大統領が初めてであった。

※続きは1月24日のメルマガ版「米中貿易「第一段階」合意に隠された“真の対立点”(前編)」で。


著者:浜田和幸
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