2024年04月27日( 土 )

中国経済新聞に学ぶ~アジア細胞治療学会の下坂皓洋理事長に聞く・お隣なので、困ったときは助け合うべきだ(前)

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 2月18日現在、日本でのコロナウイルスによる新型肺炎の感染者は616人となった。北海道、沖縄、名古屋、東京、横浜、和歌山で相次いで報告され、タクシーの運転手、患者を搬送する消防隊員、ハワイ帰りの会社員など様々である。

 日本で感染が深刻になりつつある。武漢からの渡航者に始まり、バスの運転手、ガイド、免税店の係員、そしてクルーズ船の乗客といった状況である。そして今は、一般の日本人も発熱やせきなどを訴えている。

 そして政府も、新型肺炎は現在「国内発生の早期段階」に入ったと認めている。

 そこで、アジア細胞治療学会の下坂皓洋理事長に、急遽取材を依頼した。その理由はとても簡単で、17年前に中国でSARSが発生した際、支援をしてくれたからである。下坂理事長は現在、中国の協和医科大学、第四軍医大学、北京大学腫瘍医院の客員教授を務めている。

※2月20日発刊の中国経済新聞の記事を掲載しています

 ――日本でも新型肺炎が拡大しつつあるが、実際のところは発見済みの状況より深刻なのか?

 下坂 当時のSARSでは、私も中国で感染の調査や薬の開発に取り組み、陳竺先生などとかなりのお付き合いをした。SARSは爆発的に表れたもので、急に高熱が出たりするなど感染者であることが確認しやすかった。つまり、高熱を出した人を絞り込むことが拡散防止の有効法であったのだ。しかし今回の場合、コロナウイルスはとても厄介で非常に発見しにくい。発熱時はそれほどでもなく、むしろ熱やせきなどを感じない「症状なき感染者」が多い。

 よって、現在の日本での感染者は、熱が出たりせきをしたりする人もいれば、すでに感染しているが症状はなく、普通に出勤したり会食をしたり、電車など公共の交通機関を利用している人もいる。すなわち、日本での実際の感染者は確認されているよりずっと多く、どこでも発生する可能性があるということだ。

 ――クルーズ船の「ダイヤモンドプリンセス」には二百人以上の感染者がいるが、発端は香港のある乗客であった。この乗客は「スーパー・スプレッダー」であったとお考えか。

 下坂 「スーパー・スプレッダー」という言葉はあるが、伝染病学的にいうと、この客が1月20日に乗船してからすでに三週間が経過しており、その間に1人から数人へ、そして数人からさらに多くの人へと伝わっている。クルーズ船のように閉ざされた状態でともに過ごした場合、急速に拡散するのは無理もないことだ。

 コロナウイルスは、つばきや肌の触れ合いなどで伝染する。エアロゾルによる場合もあるが、エアロゾルは空気と違い、環境や範囲に左右される。よって空気中で感染する可能性は低いので、「空調システムでウイルスが拡散した」との説はあまり医学的ではない。「ダイヤモンドプリンセス」で感染者が多発したが、最大の感染ルートは接触によるもので、つまり感染者が使った食器や備品、触った手すり(お年寄りが多い)、椅子などは、健康な人が触っても簡単に手にウイルスがしみつき、囗や鼻などを通じて感染したものだと思われる。実際、日本ではすでに三次感染、四次感染まで現れている。

 ――中国での死者の数はすでに当時のSARSを上回っているが、その主な理由は何か。

 下坂 最大の問題は、武漢市の医療体制が崩壊したことである。コロナウイルスは感染力が強いが毒性はSARSほどではない。よって、早期発見し、速やかに治療すれば、死亡者はここまで増えることもなく、かなりの人が回復するだろう。しかし武漢市は最初の段階での対応が甘く、大流行になった時には手持ちの医療資源で膨大な感染者に対応しきれず、治療を施してもらえずに命を落としてしまった人もいて、大変残念なことである。

 ――データを見ると、日本では現在、ウイルス性の感染患者の収容人数はせいぜい1,800人あまりとのこと。もし5,000名規模の感染者が出たら、どのように対応すればいいのか。

 下坂 日本では、5,000人程度ならそれほどの問題にはならない。現在、二類の感染症患者は少なく、1,800人程度で十分対応できる。万が一、五千人も出たら、国公立の病院を救急対応先に指定するので、受け入れ問題はすぐ片付くだろう。問題なのは受け入れ人数でなく、スピーディーな診断方法と大量の人工呼吸器が必要であること。これらがあれば拡散を最大限に抑えられるし、少しでも多くの命を救うこともできる。

(つづく)


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(後)

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