2024年04月26日( 金 )

【IR福岡誘致特別連載15】「IR「ギャンブル好き」と「ギャンブル依存症」はまったく別もの

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

ギャンブル依存症だった実兄

 読者のなかには、身内に「ギャンブル依存症」を抱えている人がいるだろうかそれほど多くないのではないか。

 実は、筆者にはとんでもないギャンブル依存症の実兄がいた。今回は、この経験からギャンブル依存症の問題と福岡IR誘致の関連性を説明したい。

 5年ほど前に73歳で他界した実兄のギャンブル好きは、競艇に始まり、人生の最後まで競艇に固執していた。実兄は、若いころからお酒を飲まず、クラブやスナックにも行かなかったが、麻雀、パチンコなどの博打が3度の飯より好きという典型的なギャンブル依存症であった。男の「人生の失敗」にはさまざまな要因があるが、博打はもっとも始末が悪い。

 実兄は東京のそれなりの大学を卒業し、父の縁で外資系の著名な商社に就職したが、そこからが流転の人生の始まりであった。最初の勤務地は、天神の昭和通り沿いの不動産ビル(綾杉立体駐車場の並びにある)であり、幸か不幸か、那の津の福岡競艇場に歩いて行ける場所であった。

 実兄は、レース開催日には連日のように商社の後輩と競艇場を訪れ、遊び金を使ったほんの少しの賭けから始まったが、その後、射幸心をあおられてわずかな期間に莫大な借金を背負った。

 当時は、通称「サラ金」(現在の小口金融業)と呼ばれる金融業が街に乱立しており、小口金融業同士の情報を共有する機関もなかったため、それなりの会社に勤務していれば、一定額のお金を簡単に借りることができた。そのため、実兄の借金はわずかの期間で「雪だるま式」に増えて返済不能となり、最後は、父親がすべての借金を処理して事なきを得た。

 しかし、兄は懲りることなく3度も同じことを繰り返して、父親に勘当されてしまい、そのまま歳をとり人生を閉じてしまった。「ギャンブル依存症」という病気は、死ぬまで止められない。

 筆者は実兄の体験をそばで見てきたため、すべてのギャンブルを経験しているが、ギャンブルにのめり込むことはまったくない。これは、実兄が反面教師となり筆者の人生に良い影響をおよぼしたのではなく、今でもギャンブル依存症はその人物の性格が原因であると確信している。

ギャンブル好き=依存症ではない

 福岡競艇場(施行者:福岡市、福岡都市圏広域行政事業組合、運営者:(一財)日本モーターボート競走会)は、公営ギャンブルとして知られているが、福岡競艇場の業績は一般にはあまり知られていない。福岡競艇場の年間の売上は約1,200億円で、集客数は約200万人、一方、全国の競艇場の年間の合計売上は約2兆円、合計集客数は約3,500万人だ。 

 パチンコ店では、18才以上の人口10万人あたりの店舗数を見ると、福岡県は全国で37位の9.4 件だ。鹿児島県は全国1位の17.8 件、長崎県は15位の15.1 軒、大分県や熊本県、宮崎県も福岡県より上位である。この統計によると、九州の福岡県以外の人々は、全国平均よりも「ギャンブル好き」ということになる。また、東京、大阪、福岡などの大都市がある県は、すべて全国平均より下位である。

 ギャンブル好きの人々のうち大多数が依存症になるわけではなく、筆者の実兄のように一部の人々のギャンブル依存症が社会問題となっている。ギャンブル好きは依存症ではなく、ゲームを楽しんでいる人々であり、ギャンブル依存症とギャンブル好きは大きく異なるのだ。

 前回(「【IR福岡誘致特別連載14】ハイローラーとジャンケットとは」)説明したように、ギャンブル好きのすべての人々が、IR福岡のカジノ施設に来場するのではない。入場料6,000円の支払いや、政府が予定しているマイナンバーカードでの管理により、富裕層が来場して、洗練されたカジノエンターテイメント施設を楽しむ仕組みだ。これはオンラインカジノと異なる仕組みであり、IR =ギャンブル依存症という認識は誤りだ。

 IRIR福岡は収益(ハイローラーと呼ばれるギャンブル好きの富裕層からの収益がその多くを占める)とその多額な税収を生み、これらの一部をギャンブル依存症の対策費に回すならば、新たな財源を生み出す魅力的な事業だと考えている。

 多くの人々が、ギャンブル好きとギャンブル依存症を混同せずに理解することで、IR福岡の誘致を積極的に実現できる。コロナ禍で疲弊した経済と雇用環境を再生するために、付加価値の高い統合型のシティリゾートであるIR誘致を、我々の郷土である福岡都市圏にぜひとも実現したい。

【青木 義彦】

(14)
(16)

関連キーワード

関連記事