2024年04月26日( 金 )

密と滅

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 オリンピックイヤーとして期待された2020年は、蓋を開けてみれば「密」と「滅」の1年だった。

 中国・武漢に端を発した新型コロナウイルス(以下、コロナ)の世界的感染拡大は、移動の制限をもたらし、経済を停滞させた。オンラインで「金流」は維持できても、人が動かなければ実生活を支える「商流」「物流」は滞る。「注文した商品が届かない」、そんな声があちらこちらで聞かれた。

 日本では、都市封鎖(ロックダウン)には至らなかったものの、コロナの感染拡大を防止するために、「密閉」「密集」「密接」の、いわゆる「3密」を回避するよう要請された。飛沫防止用のパーテーションを設置する飲食店が増え、映画館では前後左右1席ずつ空けての鑑賞が実施された。在宅ワークが推奨され、満員電車は一時なりをひそめたが、「テレワークうつ」という別のストレスに晒される人たちが現れた。

 人との関係性が否応なしに希薄化していくなかで求められる、コロナの感染拡大防止と経済活動の両立。「withコロナ」の実現に、多くの法人・個人が悪戦苦闘を強いられている。そんな1年を表現する「今年の漢字」に選ばれたのは、やはり『密』だった。

 明るい話題もあった。大人気漫画・アニメ「鬼滅の刃」の劇場版が、コロナ禍にも関わらず興行収入316億円を突破し、国内歴代興行収入ランキングNo,1に輝いた。配給元の東宝(株)が発表した20年11月の興行成績速報が、前年同月比1,063%を記録したことに、映画ファンのみならず、多くの人が驚愕した(下表参照)。

興行収入推移
興行収入推移
自動販売機でも『売切』の文字が躍る
自動販売機でも『売切』の文字が躍る

 「鬼滅の刃」は一大コンテンツとなり、缶コーヒーやネックレス、蒸気機関車から年賀はがきまで、あらゆる業界がコラボ商品やサービスを展開。鬼滅の刃は、名実ともに、コロナ禍で落ち込む日本経済を救う“柱”となった。

 21年、「鬼滅の刃」のような救世主は誕生するのだろうか。今はただ、一刻も早いコロナの収束を願うばかりだ。

 

【代 源太朗】

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