2024年04月27日( 土 )

【インタビュー】日本の農産物を海外にアピール 販路拡大で農家を元気に

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宮内 秀樹 衆議院議員(福岡4区選出)、農林水産副大臣

(聞き手:(株)データ・マックス代表取締役社長 児玉 直)

食の安全と安定供給に努める

 ――安倍前首相の突然の辞任から、菅政権の発足まで。政権中枢の近くで貴重な体験をされたのではないですか。

宮内 秀樹 衆議院議員(福岡4区選出)、農林水産副大臣
副大臣室で

 宮内秀樹(以下、宮内) 安倍前総理が突然お辞めになったのは確かに想定外でした。辞められた直後は「ポスト安倍」がはっきりとしないまま、自民党内にも悶々とした空気が流れていたと思います。ただ、自民党が強さを発揮するのはまさにこういう状況にあるときで、新型コロナ禍への対策も含めた難局をどう乗り切るのかということで一致団結しました。そのなかで、岸田文雄前政調会長や石破茂元幹事長とともに菅(義偉)さんの名前が浮上し、国難に立ち向かうには菅さんしかないという流れがあっという間にできました。

 私自身のことでいえば、菅内閣のもとで副大臣になることはまったく想定していませんでしたし、党内でも「3回生の登用はない」(当選3回目の議員の入閣はない)という見方が大勢でした。いまは3回生の数が多いこともありますし(笑)。ただし、ずっと「次は副大臣に」という思いがありましたので、そういう意味では二階(俊博)幹事長から連絡をいただいたときは驚きましたし、やはりうれしかったですよ。

中国14億人の市場開拓

 ――本来であれば、国土交通省が得意分野ですね。よく「省が違うと文化も違う」と言われます。

 宮内 役所によって文化も違えば、価値観も違うんですね。しかし、食料についての勉強は想像以上に興味深いものです。単に「食料の安定供給をがんばりなさい」という政策ではだめで、食料の価格を安定させるためにさまざまな需給調整システムがあったりと、そういう意味では国交省とはまったく違う価値観のなかで政策がつくられています。

 いま目標としているのは、日本の農業所得を上げて、農業人口を増やすということです。そのためには、海外市場に目を向けなければなりません。海外に市場を広げてそこで農産物を売って利益を日本に還元する。この仕組みがうまく機能すれば農家の所得も増えて、農業人口も増加に転じるはずです。いわば「農業の産業化」ということで、3年ほど前から日本の農産物を海外に輸出するという旗を掲げて、まずは1兆円を目標にしてきました。それが2019年に約9,100億円まで到達したんですね。これを25年に2兆円、30年には5兆円にしようという目標に向かって戦略を立てています。

 もっとも、農家の方に「たくさん売りなさい」と丸投げしたところで、成功するはずがないです。農作物を育てる、輸送する、海外の販路に乗せる、さらには市場開拓など、さまざまな要素が揃わないと目標は達成できません。とくに難しいのは海外市場まで運ぶ手段、輸送の部分です。そこで、国交省と農水省の縦割りを排除しようということで、輸送の部分をどう工夫すればコストカットできるのか、一緒に勉強会をしているところです。とくに生鮮食料品は飛行機で送っているのですが、そうなると運べる量も少ないしコストもかかります。だから現地で「あまおう」を1パック2,000円で売ったりしているんですね。やはり船で大量に輸送することを考えないと競争力がなくなります。

 ――2兆円の市場というと、どのあたりを想定していますか。

宮内 秀樹 衆議院議員(福岡4区選出)、農林水産副大臣 宮内 いま増えているのは、シンガポールと香港なんです。一番売れているのが日本酒で、日本の料理と日本酒を合わせるとおいしい、という認識も徐々に広がっています。今後は日本の食材を紹介すると同時に料理法や食べ方も一緒に輸出すべきです。それがシンガポールや香港で少しずつ展開できています。

 船で輸送するには、コンテナである程度大量に輸出することが必要になりますが、いまの冷凍コンテナではあまり日持ちしないらしいんです。鮮度と味を維持して、しかも商品として見た目も良く2週間~3週間もたせるとなると、コンテナの性能をもっとレベルアップさせなければなりません。コンテナ内をゼロ度~2度という温度に保ち、しかも冷凍させずに鮮度を保つリーファーコンテナがあり、すでに取り組んでいる方もいらっしゃいます。そういうところに補助金をつけるなどして輸送形態の常識を少しずつ変えていかなければならない。これについては、国交省と農水省が一緒になって取り組んでいます。

 また、市場としては中国14億人の胃袋も意識しなければなりません。中国は政治的関係性もあって貿易拡大は容易ではありませんが、実は昨年4月に習近平国家主席が日本にいらっしゃるタイミングに合わせて牛肉の輸出を検討していました。新型コロナ禍の影響で来日は実現しませんでしたが、肉や魚、さらに米などの販路を中国で広げることになれば、日本の農家はまったく新しい局面を迎えると思います。

 忘れてならないのは、中国はいまだ福島第二原発事故に関連して放射能汚染の可能性を高く見積り、関東圏の農産物を輸入していません。二階幹事長もこの問題はかなり憂慮されて力を入れていますし、まずはこの規制を解除することで日中間の食の問題を改善していきたいと思います。

(取材日:2020年12月13日)


<プロフィール>
宮内 秀樹
(みやうち・ひでき)
 1962年愛媛県松山市生まれ。愛媛大学教育学部附属中学校から県立松山東高校を経て、1986年青山学院大学経営学部を卒業。1986年塩崎潤衆議院議員秘書。1993年塩崎恭久衆議院議員秘書。1996年渡辺具能衆議院議員秘書。2012年12月衆議院議員初当選(第46回総選挙)。2014年12月衆議院議員当選。2015年10月国土交通大臣政務官。2017年8月自民党副幹事長。2017年10月衆議院議員当選。2020年9月農林水産副大臣(菅内閣)

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