2024年04月27日( 土 )

AIとITを最大限駆使 最新の住宅保守・メンテナンス事業に挑む(後)

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暮らしのデザイン(株) 代表取締役 高城 英一郎 氏

 前職でDXを積極的に活用し、AIによる業務の高度化を推進した高城英一郎氏。高城氏は今年4月に「暮らしのデザイン(株)」を設立し、AIとITを最大限駆使した住宅保守メンテナンス事業を開始した。新たな事業の構築に挑戦する高城英一郎社長と、そのパートナーとして一緒に起業した(株)なかやしき取締役専務の中屋敷善太郎氏に話を聞いた。

(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役 児玉 直)

地域ビルダーとともに

 ――貴社はどのようにして対価を得るのですか。

 高城 新築から2年間の無償保証期間が経過した後、保守ステージの際に住宅メーカーさまから保守代行費をいただきます。ITを活用して行うため、「従業員を1人雇って部屋をメンテナンスするよりも、圧倒的に安い方法で行いましょう」という提案です。次のステージは、マーケティングの観点から、修理やメンテナンスを「うちラク」が代行することによって、お客さまは安心・安全に住み続けられるという提案です。「うちラク」は売上高から手数料をいただきます。最終的にはコミュニティサイトをつくって、住宅の困りごとに関するお客さま同士のコミュニティをアプリ内に立ち上げます。コミュニティ内のお客さまの声を基に、必要なものを企画・開発してご提供していくという、3段階のステージを計画しています。保守・メンテナンスの延長線上には、住宅メーカーが課題とする定期点検業務をIT活用により代行することも視野に入っています。戸建、マンションのどちらも対象です。ただし、戸建住宅は管理会社がないので、保守・メンテナンス分野は遅れているのが現状です。

 中屋敷 新たな事業のビジョンの1つに、地域のビルダーに強くなってほしいという点があります。たとえば住宅業界では、新築を施工したビルダーにリフォームを依頼するお客さまの割合は10%を下回っています。新築を提供した後もお客さまとの関係を継続するためのサービスは、今後重要になります。保守・メンテナンスについては、住宅ビルダー各社で専門的に取り扱う部署や仕組みは整備されていません。「うちラク」の理念を理解していただける住宅事業者さんたちと一緒に、既存顧客を生涯顧客にするスキームをつくっていきます。保守・メンテナンスは自動化する必要があります。人が関わる業務がまだ残っていること自体が課題なのです。

 ――最大の収入は先ほどのお話の通り、工事が発生したときですね。

 高城 そうです。保守・メンテナンスは効率化によって少しずつ利益を出します。基本的にはマーケティングの支援により、いかに1件あたりの顧客資産価値を高める。言い換えればお客さまとの関係をより良いものにできるかが我々のミッションです。現在は顧客資産価値がゼロの顧客は、たとえばなかやしきさんならば4,000人います。お客さま1人2万円の売上があって、この関係が良くなれば4倍になるという、生涯顧客資産価値を最大限引き上げていくことが我々の目指すところです。

3年以内で全国展開

 ――今後の展望についてお聞かせください。

 高城 なかやしきさんと組んで、お客さまのライフステージに沿った提案を行い、保守・メンテナンスからマーケティング、コミュニティのサポートに取り組んでいきます。住宅業は地場産業です。私も北九州で育ったので、福岡から発信していきたいという一心です。我々と住宅事業の経営者が共感できて、お互いにつくり込んでいける関係を構築して、お客さまとともに住宅そのものの資産価値を高めること、皆さんが幸せになるビジネスを展開していくことが使命です。まずは地元・北九州の市場を開拓し、保守・メンテナンス市場を掘り下げていきます。年間20棟前後を供給する工務店とパートナーシップを組んでいきます。20棟規模の事業者になりますと、保守・メンテナンスの課題は必ず抱えています。近年、北九州の新築供給はジリ貧ながら、約5,000件で推移しています。今後の市場性も期待できます。現在の「うちラク」のシステムをアップデートさせることで利便性を高めます。保守・メンテナンスだけでなく、施工管理まで対応できるシステムを構築し、全国に広げていきます。全国の地場ビルダーのうち、引き渡し以降のお客さまとの関係性を大事にされている事業者へ提案し早期に3万ダウンロードを実現します。3年で6万ダウンロードを実現できるよう全力で事業を推進していきます。1件あたりの売上を3万円と想定すると、事業者の売上高は18億円です。当社は若干の手数料をいただくというビジネスモデルです。3年以内に事業化する計画です。

(了)

【文:構成:河原 清明】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:高城 英一郎
所在地:北九州市小倉北区上到津2-3-9
設 立:2021年4月
資本金:5,000万円


高城 英一郎 氏<プロフィール>
高城 英一郎
(たかぎ・えいいちろう)
1969年生まれ、福岡県大野城市出身。米ジョージ・ワシントン大学卒。TDK米国法人を経て、2000年国内浄水器メーカー入社。営業本部長、専務を歴任し、18年4月代表取締役社長。21年4月に暮らしのデザイン(株)を設立し、代表取締役に就任。

(前)

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