2022年05月24日( 火 )
by データ・マックス

【ラスト50kmの攻防(26)】与党方針に三者三様の受止め

 未着工の九州新幹線「新鳥栖―武雄温泉」間の検討方針をまとめた与党西九州ルート小委員会の山本幸三委員長が6月22、23日の両日、佐賀県、長崎県、JR九州を回って内容を報告。さらに国交省の担当課長が23日、佐賀市議会の超党派議員の勉強会に駆け付けた。

 22日――山本委員長は佐賀県庁舎を訪ねた。およそ2年前、山口祥義知事は山本委員長との面会を避けたが、さすがに今回は会った。山本委員長は、佐賀県の建設費負担を軽くするJR財源の拡大や並行在来線のJR九州による維持といった西九州小委の検討方針を手短に報告した。もちろんフル規格が前提だ。

 山口知事は「フル規格に手を挙げていないので、与党が上から決めつけるのは止めてほしい。国交省と『幅広い協議』をしている。見守ってほしい」と従来の姿勢を堅持。数分間の面会だった。

 2012年6月。佐賀県は「新鳥栖―武雄温泉」にフリーゲージトレイン(FGT)を導入する前提で、「武雄温泉―長崎」のフル規格整備で政府与党と合意した。ところが、政府与党は18年7月にFGTを断念、翌19年8月に「フル規格が適当」とした。この経緯から山口知事は、FGT断念の時点で佐賀県は新幹線の要望を取り下げたのに、与党が新幹線を押し付てくる、と考えているわけだ。面談後の囲み取材に対し、山口知事は「与党の努力に感謝の気持ちはある」としながらも、見解を力説した。

 23日――山本委員長は長崎県の中村法道知事と会って検討方針を伝えた。中村知事は「佐賀県との協議の場を模索する」と協力を申し出た。またJR九州の経営陣との面談内容は、双方が一切明かしていない。検討方針への“三者三様”の受止めが浮き彫りになった。

 「これまでなかったことが起こった。佐賀県は新幹線を求めていない。少なくとも二元代表制の自治体代表の1人(山口知事)がそう言っている。しかしネットワークをつなげないといけない。50%以上の方に新幹線が必要と思っていただけること。それが課題でしょう」。

 23日午後。佐賀市議会で開かれた超党派議員による「新幹線問題会」。佐賀県との「幅広い協議」を重ねる国交省の足立基成・幹線鉄道課長は、“課題”を尋ねた佐賀市議の問いかけにそう回答した。中央省庁の担当課長が市議会とやり取りすること自体が極めて異例だ。

 佐賀市は現職の秀島敏行氏が05年10月から市長のイスに座る。15年1月の知事選で初当選した山口知事の有力後援者で新幹線にも慎重姿勢。その秀島氏はすでに勇退表明し、後任は10月の市議選とのダブル選挙で決まる。ただ新幹線建設の是非が、選挙の争点になるかはまだ見えない。

佐賀市議会 勉強会 国交省 足立基成幹線鉄道課長
佐賀市議会の勉強会で、新幹線建設の意義などを説明する
国交省の足立基成幹線鉄道課長(左)
=佐賀市栄町の市議会大会議室

【南里 秀之】

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