市営住宅約3,500戸分を建替え、資産価値の維持・向上へ
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ストックの活用で持続可能な社会を
市営住宅の建替え事業は、公営住宅法などの関連法令に基づき進められている。市ではこれまで、人口ボーナス期とその恩恵による高度経済成長の波に乗り、約3万2,000戸(182団地)の住宅を建設してきた。しかし、その大半の住宅が築40年以上経過しており、老朽化への対応が課題となっていた。
これに対応するとなれば、市は莫大な予算を投じることになるが、大規模改修や建替え工事を通じた既存資産(ストック)の再生は、SDGs(持続可能な開発目標)に取り組まなければならない現代において、避けては通れなかったものだ。市は単なるスクラップ&ビルドにならないように、建替え事業については併せて近隣に公園を新設するなど、周辺環境との調和を図りながら事業を進めている。また、市営住宅入居者や来訪者の利便性向上を目的に、市営住宅附帯駐車場の空き区画などにコインパーキングを設置するなど、少しでも収益を生み出せるように、さまざまな提案を積極的に行っている。
官民ともに、新築物件の開発と同様、ストックである中古物件の利活用にも目を向ける必要がある。住まいには、周辺環境と物件とを一体的にとらえた、将来にわたる暮らしやすさの追求が求められているのだ。Wi-Fiなどの通信設備の標準装備、机や椅子などの家具の導入を視野に入れた間取りの採用や宅配ボックスの設置など、コロナ禍で進むテレワークやデリバリーサービスへの対応もその1つだろう。
こうした対応は、ストック活用でも十分可能なものだ。既存物件の持つ立地条件、あるいは建築された時代を感じさせるデザインをそのままに、利便性を時勢に応じてアップグレードさせることで、入居者が長く住み続けられ、周辺住民からもまちの小さなランドマークとして長く愛される住まいづくりを期待したい。
(了)
【代 源太朗】
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