2024年05月07日( 火 )

【九州鉄筋工事業団体連合会】顧客のためにも労務環境改善へ

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九州鉄筋工事業団体連合会
会長 宮村博良 氏
(福岡県鉄筋事業協同組合 理事長)

受け入れる側に求められる責任

 ──人材を受け入れる側にも、相応の責任が求められます。

 宮村 今、業界が抱えている大きな問題の1つに、社会保険未加入問題があります。法令によって加入が義務付けられている健康保険や厚生年金保険、雇用保険、労災保険など各種保険について、未加入の企業や労働者が少なくありません。おおよそ6割の加入率ではないでしょうか。このことは、大きく以下の2つのことに影響します。

 まず、「社会保険がない企業に入ろうと思いますか?」ということです。国民年金だけでは老後の生活に不安を感じてしまうでしょう。やはり、厚生年金がもらえるような企業じゃないと、責任をもって働いてもらうことは難しいのではないでしょうか。

 次に、請負単価の問題。社会保険料を払わないと労務単価が安く抑えられ、それにともない請負単価も抑えることができ、受注単価競争では有利となります。根底にあるのは、個人事業主の場合、抱える社員が4名以下であれば、社会保険の加入義務がないということです。
 当社と取引のある会社については、社員の方々、ひいては自社のためだからと、法人化してとにかく社会保険加入するようにと勧めています。個人的には、建設業の県知事登録の条件として社会保険および厚生年金加入を必須とするぐらいしないと、この問題は解決しないのではないかと考えています。

 昨年12月、九鉄連総会を開催した際に、国土交通省九州整備局(以下、九地整)県政部長・津森洋介氏に講話していただきました。津森部長は、担い手不足や処遇改善に向けて各団体との意見交換を積極的に行われており、社会保険加入の徹底や休日2日を前提とした工事の発注など問題意識ももっておられます。九鉄連も九地整と協調姿勢で、労務環境改善に取り組んでいるところです。

九州鉄筋工事業団体連合会 会長 宮村博良 氏
九州鉄筋工事業団体連合会
会長 宮村博良 氏

顧客のために労務環境改善を

 ──九州では熊本のTSMC工場や鹿児島の京セラ工場新設など、大型物件の竣工時期が重なっています。

 宮村 TSMC工場建設だけでも、鉄筋工の職人が500名は必要となるのではないでしょうか。九州の職人だけでは足らず、全国から集めなければならないでしょう。人を集めるには、交通費や宿泊費など、やはり資金が必要となります。そのためにも、請負単価を上げていくことが重要です。厚生労働省が発表している19年時点の建設業労働者の年間賃金総支給額は約462万円、製造業は約479万円、全産業では約560万円です。建設業はまだ低く、人材を増やして職人を育て、社員の生活水準を上げるためには、現行単価のままでは実現が困難です。今後ますます人手不足が加速する恐れがあり、現場に職人を送ることができなくなる可能性もあります。そうなれば、困るのは元請であるゼネコンです。請負単価を上げてもらえれば、人材も増え、良い職人を育てていけます。仕事の質が上がれば、結果的にゼネコンにも継続受注として還元されることになります。

 適正価格の実現による適正施工。元請だけでなく、下請企業、さらには孫請企業などにも適正な金額で工事契約をすることで、粗雑工事に陥ることなく、労働環境・条件の改善、安全対策の徹底につながるのです。

 ──最後に、貴団体が目指す将来像などについてお聞かせください。

 宮村 鉄筋工事業界に「若い人」が入ってくるようにしたいですね。業界の将来のためにも、鉄筋工の職人が入職しやすい労働環境の整備や、職人を育て後継者を残せるようにして業界全体の若返りを図り、10年後も現在働いているすべての職人が残れるように、信頼される仕組みづくりや組織活動、必要な陳情などに努めてまいります。

(了)

【内山 義之】


<プロフィール>
宮村 博良
(みやむら・ひろよし)
熊本県生まれ。19歳で鉄筋工業界に入職し、84年6月、鉄筋工事の請負施工を目的に創業。87年2月、(有)宮村鉄筋工業(現・(株)宮村鉄筋工業)を設立。2019年12月に九州鉄筋工事業団体連合会会長に就任。現在2期目を務める。

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