2024年03月29日( 金 )

弱みを生かした福岡の都市づくり再考「遅い開発」と中古市場の親和性(1)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
ポートランド:Ace Hotel
ポートランド:Ace Hotel

福岡市の成長

 “出生率が死亡率を超えることがない限り、日本はいずれ消滅するだろう”―世界的起業家のイーロン・マスクの発言が記憶に新しいなか、厚生労働省は「人口動態統計」を発表した。この1年で出生数は3万人減少したという。

 2016年2月、福岡市の人口は神戸市を抜き、第5位(政令指定都市)にランクインした。これまで日本の人口五大都市といえば、長らく、横浜市、大阪市、名古屋市、札幌市、そして神戸市という状態が続いていた。15年に行った国勢調査では、福岡市の人口は153万8,681人、神戸市は153万7,272人で福岡市が逆転。その差は1,409人とわずかながら、1920年の国勢調査開始以来、常に人口規模では勝てなかった神戸市を追い越し、福岡市が日本五大都市の仲間入りを果たした。

 福岡市の人口増加は、35年ごろまで続くと予測されているが、生産年齢人口は11年の101万6,500人をピークに、15年に100万2,300人、16年には99万9,900人に減少した。日本全国の生産年齢人口は、1995年に72.9%を記録したときを頂点に、減少傾向に転じて久しい。そろそろ豊富な労働力による経済成長だけでなく、限りある労働力のなかで、いかに地域経済の持続化が臨めるかを見据えていく時期に来ているのだ。

(出典:福岡市統計調査課)
(出典:福岡市統計調査課)

若者人口が多い教育都市

 福岡市は若者が多い。だからこそ活力があり、成長著しいといえる。若者が集まって来る下支えの要因として挙げられるのは、教育機関の充実だろう。政令指定都市の大学および短期大学数を比較すると、京都市、神戸市、名古屋市、札幌市に次いで福岡市は5番目に位置し、学校数が多い都市である(東京都は除く)。学生数も京都市、名古屋市、横浜市に次ぐ第4位を誇り、人口に占める学生の割合を見れば、京都市に次ぐ第2位である。教育を受けた場所で働き始め、やがて家族をもつ。そんな循環が続いているのかもしれない。

 世界ではすでにミレニアル世代が経済を引っ張り、20年には世界労働人口の35%を超え、30年には75%を占めると言われている。日本の場合、逆転現象にはなっているものの、これから彼らが社会の中核を担っていくことに違いはない。彼らに対応して、社会の構造や都市の構造もかたちを変えて最適化していくことが、必要な準備となる。

大都市の大学及び短期大学の概況-2015年(福岡市HP)
大都市の大学及び短期大学の概況 2015年(福岡市HP)

松岡 秀樹 氏<プロフィール>
松岡 秀樹
(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。

月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。

ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)

関連記事