2024年04月29日( 月 )

弱みを生かした福岡の都市づくり再考「遅い開発」と中古市場の親和性(1)

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サービス産業の街・福岡

 もともと博多の商人によって経済が栄えた歴史がある福岡市は、「民間の力」が都市の基礎を形成している。明治維新から現代までをたどっても、行政の再開発でまちが大きく増幅したという例はあまり見られない。むしろ民間が都市の未来像をしっかりと描き、都市に必要な公共機能へ投資することで、まちを発展させているのだ。

 明治から昭和にかけて、全国的に工業集積が推進されてきた。たとえば、北九州市は「官営八幡製鐵所」をはじめとする有力な工業施設を有し、戦前には日本の鉄鋼生産量の半分以上を担うほどに成長した。近隣にも、炭鉱を多数集積する筑豊や三池炭鉱のある大牟田市もある。福岡市はすでに工業都市化で発展していた周辺都市に追いつくことができず、都市間競争で完全に出遅れていた。しかしこれらの都市を後追いせず、素早くサービス産業の集積へと舵を切り、九州の“管理中枢都市”を目指した。周辺エリアが活況になれば、相乗効果で福岡市の雇用や市民所得もプラスに働く。他都市と同じ産業分野で出し抜こうとするより、活発な産業を周りの都市に譲り、そこで得たお金を福岡市で消費してもらうという流れをつくったのだ。

 1966年の「第二次福岡市総合計画」では、「管理中枢都市として福岡市の向かうべき道は、文化・教育を含む第三次産業を中軸とする都市型工業への特化、開発に力点を置くべきである」と明言している。大きな本流をつくり、その後は民間にバトンをわたす。時間にしておよそ50年の時を経て、現在の福岡市の骨格をつくったのだ。

福岡市の産業の特化係数 2015年(福岡市HP)
福岡市の産業の特化係数 2015年(福岡市HP)

(つづく)


松岡 秀樹 氏<プロフィール>
松岡 秀樹
(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。

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