2024年04月26日( 金 )

韓国は焼肉王国?(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 韓国は農耕文化だったので、牛は耕作のための主要な手段なので屠畜が禁止されていた時期もあったという。それで、農事に利用されていた牛が死ぬと、その肉を食べていた。食用に飼育されていたわけではないので、肉は筋張っていて多分おいしくなかっただろう。飼育されている牛には、大きく分けて2種類いる。早く育てて肉にするための牛と、牛乳を搾るための牛である。

 焼肉に使われる肉はもちろん前者で、早く牛が成長することと、肉が多く取れることと、肉質が良いことが求められる。牛を早く成長させるためと、肉が多く取れるようにするためには、牛の品種の改良などさまざまな研究が行なわれている。それから肉質を良くするためにも、餌を工夫するなど、畜産農家ごとにさまざまな試みが行われている。焼肉用として販売される牛肉の場合には、肉をやわらかくするため、牛舎で牛を飼育しているのがほとんどである。

 アメリカは広大な土地があり、牧草も豊富で餌も安いために畜産に向いている国である。アメリカは畜産の生産性においても世界一の国である。その結果肉の消費量においても世界一になっているわけだ。アメリカはそれだけでなく、どの国よりも畜産の産業化に先に成功し、加工、運搬、保存、消費のサプライチェーンを完成させている。

 なぜマクドナルドなどのファーストフードチェーンがアメリカで発達を見せたのか、その背景が理解できるだろう。
 アメリカは自国だけでは肉が全部消費できないので、世界に向けて肉類を輸出している。現在韓国のレストランで提供される牛肉はアメリカ産かオーストラリア産が多い。このように世界一の畜産の生産性が皮肉にもアメリカに肥満という問題をもたらしている。韓国は牛肉が高いので、アメリカのように食べたくても食べられない。面白いことに、それが健康には良い結果をもたらしている。

 もう1つ、肉質が良い肉として、基準になっているのが霜降りの度合いである。
 日本語では霜降りというが、他の国ではマーブルともいう。業界用語ではサシと表現している。すなわち、赤身ではなく、脂肪が多い肉が好まれる傾向が続いている。驚いたことに、フランスでは赤身肉が主流のようだ。日本と韓国などでは霜降りの度合いが段々高くなって、今は統計を見ると、50%を超えるようになったらしい。

 日本の和牛、そのなかでもブランド牛として有名な松坂牛、神戸牛、米沢牛などがある。正直このようなブランド牛はたしかに口に入れるととろけるし、とてもおいしい。しかし、脂肪が多くて、すぐ飽きて、多くの量は食べられない。それでも、市場では霜降り度が高くなることが求められている。

 皆さまは肉のランクの中には最上級である「A5」ということを聞いたことがあるだろか。プロによると、牛肉にはA~Bの3つのランクがあって、牛の身体全体で食用の肉が一番多く占めている度合いを表し、5というのは肉質のランクで、A5はその一番上のランクを指しているようだ。

 日本人から「韓国人は毎日焼肉を食べるのか」と質問をされるが、韓国では毎日焼肉を食べているわけではない。ただ、韓国で焼肉を食べると、サンチュ、にんにくを始め、いろいろなおかずがついていて、お代わりは無料である。高級店の場合には店員が肉を焼いてくれる場合も多く、店員が肉をハサミで切りながら焼いてくれる光景はめずらしいのか、びっくりする日本人が多い。多分肉質は日本のほうが勝っているが、肉にしっかり下味がついていて、それが日本人の口にはあうのかもしれない。

 やはり、焼肉は韓国を語るうえで、欠かせないメニューであることは間違いない。

(了)

 
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