2024年04月26日( 金 )

5G時代の到来とその主導権争い(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 最近、韓国のテレビのコマーシャルに「5G」という言葉が頻繁に登場するようになった。2月に開催された平昌冬季オリンピックの際にも、韓国はIT強国としての実力を世界にアピールするため、5Gの技術が最大限活用されていると宣伝されていた。

 5Gとはどのような技術で、私たちの生活にどのような影響をおよぼすことになるのかを今回は取り上げてみたい。

 5Gとは、次世代の通信技術で、GとはGeneration(世代)の頭文字である。まず、本題に入る前に、昨今の状況を簡単にふれてみよう。最近、中国の携帯電話メーカーの躍進には目を見張るものがある。日本でもヒットを連発しているファーウェイをはじめ、シャオミ、OPPO(オッポ)、Vivo(ビボ)などは、すでに世界的な端末メーカーへと成長している。5G時代になると、ますます、その勢いは増して行くと予想されている。

 中国には全世界で一番多くの加入者を抱えているチャイナモバイルという会社がある。2018年の加入者数は、9億人を上回っており、LTE(第4世代の通信技術)の加入者数だけでも、6億7,000万人いる。同社は、単なるキャリアというより、中国のIT産業を支える中核企業といった方が良いだろう。

 チャイナモバイルはLTEサービスを韓国、米国、日本よりも2、3年遅れた2014年に開始している。その際、チャイナモバイルは、すでにほかの国で採用されている通信方式であるFDD(周波数分割)を採用せず、独自の標準であるTDD(時分割)方式を採用することにした。そのような状況だったので、TDD方式には中国端末メーカーだけが対応できた。

 これをきっかけにして、中国の端末メーカーは足場を築き、現在のように成長できた。すなわち、中国のキャリアと中国の端末メーカーが協力し、外国メーカーを排除し、自国メーカーが成長できるようにしたわけだ。 サムスンもアップルも2、3年遅れて、ようやく中国独自の方式に対応できるようになった。普通なら、そのようなことは難しいが、チャイナモバイルは毎月1,900万人の新規加入者があり、中国の端末メーカーは中国市場に対応しただけでも、大きな市場が確保できるようになっていた。

 このような背景下、国内市場で力をつけた中国メーカーは、その勢いのまま、東南アジア、ヨーロッパ、アフリカ、日本まで市場を拡大させるようになった。

 5Gの商用化が一番早かったのは、米国だが、中国は5Gにかなり力を入れている。中国は今までは無線通信で遅れていたが、5Gでは、世界をリードしたいという野望を抱いている。

 実際、通信設備会社のファーウェイは、この分野において世界をリードしている。ファーウェイは通信機器の世界最大手だが、5Gにおいても、技術は先行し、価格は他社に比べ、30%くらい安いようだ。5G技術が通信機器と無線通信に限られるなら、それほど大きな問題にならないが、自動運転自動車、遠隔医療、ドローン、VRなど、未来の成長産業である分野において、5G技術は産業競争力を左右することになる。最近、米中貿易戦争が大きく話題になっているが、その本質は、実は5Gをめぐった覇権争いであるという指摘もあるほどだ。

(つづく)

(後)

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