2024年04月26日( 金 )

「地盤革命」「住宅革命」に挑戦 M&Aによる リフォーム事業進出(後)

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地盤ネットホールディングス(株) 代表取締役 山本 強 氏

微動探査システム「地震eye®」実用化

 ――御社の主力事業についてお聞かせください。

地盤調査から新築着工、中古住宅のメンテナンスを
ワンストップで提供

 山本 弊社の企業理念は、「幸せは、JIBANの上に築かれる。」で地盤の大事さをさまざまな機会で訴えておりますが、主力事業は戸建住宅の地盤調査です。土砂崩れや洪水を除くと、地盤調査は建物の重さに対する地盤の不同沈下の調査、液状化に対する調査、揺れに対する調査が重要です。これが、自身の財産を守る鍵です。そして、これら3つの調査メニューをそろえているのは弊社だけです。とくに、熊本地震の年から、国立研究開発法人防災科学技術研究所、白山工業(株)、弊社の三者共同研究で、地震の揺れやすさを測定する微動探査システム「地震eye®」の民間提供をスタートしました。

 機械の性能もさることながら、防災科学技術研究所は国の機関ですので、各地域のボーリングデータやハザードマップなどのデータも最も多く保有しており、微動探査のデータのみならず、国のお墨付きで立体的な地盤のモデルとして提出できる調査データなのが画期的です。場所によって揺れやすい地盤、揺れにくい地盤もあり、微動探査はその揺れやすさが数値化できます。揺れ方の違いが、住宅の被害を大きく左右します。

 加えて「地震eye®」などのノウハウをフランチャイズ企業に提供し、プレカット業やリフォーム業など住宅関連ビジネスとシナジー効果を図っています。

 ――フランチャイズ参入も増加していますね。

 山本 「地震eye®」が住宅関連業界で大変評価されました。17年には、ビルダー8社、建材・材木プレカット4社、土木5社、解体3社、そのほか8社の合計28社がフランチャイズ参入し、1年で新規加盟数は7倍になりました。しかし、フランチャイズの数を増やすことに注力するのではなく、今後は質の向上に努めていきます。あとは、加盟された方の収益性向上も重要なポイントです。加盟業態も住宅関連業界で、単に地盤調査での収益だけではなく、今まで接点のなかった顧客層を本業に誘引できるクロスセル効果も期待されています。

地盤調査のフランチャイズ急増

新築事業とリフォーム事業参入の意図とは?

 ――続いて、住宅建設事業参入の意図についてお聞きします。

住宅✕地盤サミットで山本社長も登壇

 山本 地震に強い新しい家づくりである「地盤適合耐震住宅」の事業拡大のために、今回新築・リフォーム事業にも進出しました。

 地盤ネットは、住宅設計・販売・施工業務を行っているジャパンホーム(株)と事業譲渡契約を締結し、住宅事業を開始しました。11月28日の「いい地盤の日」には、「住宅×地盤サミット2018」に特別協賛をいたしました。熊本地震では、大規模盛土造成地の崩壊や液状化などで約1万5,000件の宅地が被災しました。9月の北海道胆振東部地震でも液状化の被害は記憶に新しいです。住宅単体を頑丈にするのではなく、住宅を地盤と一体として考える家づくりこそが必要で、「施主の生命や財産を守る家づくり」を訴えていきます。

 従来、弊社は新築住宅向けに地盤調査を実施してきました。しかし、地震が起きると既存住宅での被害が圧倒的に多い。既存のリフォーム会社に耐震化を進めるために、地盤調査の重要性を提案してもピンとこないのです。そこで弊社が住宅会社とM&Aをし、一緒に営業し、「地盤適合耐震住宅」の成功事例をつくり、拡大したい。エリアを東京・神奈川と絞ってやっています。地盤の良し悪しによって、住宅倒壊が起こってしまっては元も子もありません。リフォームの際であっても、しっかりと地盤のリスクを検討し、対策をすることが肝要です。

地盤ネットの調査体制

いつまでも安心して住み続けられる家づくり

 ――災害大国日本での家づくりについて教えてください。

 山本 東日本大震災、熊本地震などで家屋倒壊は問題視されています。実は、これらの震災の教訓は、同じ地域であっても「地盤の揺れやすさ」によって、被害の違いが生じています。ですから、より地盤の情報を多面的に得ることが重要になっています。「地盤リスクの見える化」「地盤特性を考慮した高度な耐震設計を全棟で標準化」「自然災害による地盤事故まで補償」の三本柱で、いつまでも安心して住み続けられる家を目指していきます。地盤と住宅が協業し、「地盤適合耐震住宅」さらには「災害免責ゼロ住宅」の成功事例をつくりたい。成功事例が続けば、ビジネスの拡大を狙うことが可能です。この成功事例を認定化することで、ビルダーなどと協業した拡大が可能です。

 地盤会社と住宅会社は相性が良い。ジャパンホームには、注文住宅を設計することができ、一級建築士も多く、施工管理の担当者もおります。住宅会社か地盤会社の責任なのか不透明な部分も指摘されますが、弊社は、完全責任施工でワンストップサービス化していますから、安心して任せてもらえると信じています。さらに、リフォームが加わっていくなかで、既存住宅にも適応でき、施主とは生涯付き合っていくことができます。

自治体との協業も目指す

 ――地盤ネットが目指す3つのゼロ、「3ZERO(スリーゼロ)計画」が開始されましたね。

 山本 近寄りにくい地盤を、アニメのキャラクターによってアピールをしています。「不同沈下事故ゼロ、豪雨事故ゼロ、震災事故ゼロ」という「3ZERO計画」を発表し、予期せぬ災害から住宅被害や国民の安全を守るためのキャンペーン活動を行っていく予定です。

 とくに、空き家問題を抱えている自治体とは協業していきたいですね。自治体に加えてゼネコンやデベロッパーとの協業など、これからの業務の可能性は多岐にわたります。デザインとの融合が必要で、「オシャレで安全」な住宅を目指し、そして全国的に南海トラフなどの大型災害が来る前に、安全な環境を普及させていくことが弊社の願いです。

(了)

【長井 雄一朗】

<Company Information>
代 表 : 山本 強
所在地 : 東京都千代田区丸の内1-8-1
設 立 : 2008年6月
資本金 : 4億9,040万円

(前)

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