2024年04月27日( 土 )

長崎の人の魅力を観光資源へ!受け入れるDNAを生かす「進化するまちづくり」(前)~田上富久長崎市長

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 「長崎さるく」「まちぶらプロジェクト」といった市民参加型の観光プロモーションを実施する一方で、長崎駅周辺の再開発では、新たな交流拠点施設を建設するなど、ソフトとハード、両面の取り組みを行っている長崎市。人口減少、高齢化、インバウンドの増加といった社会ニーズの変化に合わせて、まちの風景にも変化が見られつつあるなか、10年間、市政トップとして長崎のまちを見てきた田上富久長崎市長は、どのように舵取りをしていくのか。長崎市のまちづくりをテーマにインタビューを行った。

『まとまり』と『つながり』

 ――人口減少や高齢化といった社会課題があるなかで田上市長が掲げられている、「ネットワーク型コンパクトシティ長崎」の考え方についてお聞かせください。

田上 富久 長崎市長

 田上 長崎に限らず、都市の在り方を考えるときには、たとえば、都市の位置、都市化のプロセス、歴史、文化、自然、市民性、生活様式などについて考えなければなりません。長崎市のまちについて考えると、中心部の港を囲むエリアにはほとんど平地がないため、埋め立てによって平地をつくりながら、そこにさまざまな機能を配置してきたという都市化のプロセスがあります。
 つまり、もともとコンパクトシティとして形成されてきたわけです。また、明治22年の市制施行以来、合併を繰り返しながら広がってきたというプロセスがあり、初めに7㎢だった市の面積は、今では406kmと、実に50倍以上になっています。合併によって、いろいろな歴史、文化を持った地域が長崎市に加わり、今や、熊本市(389.5km)や福岡市(340km)よりも広いまちになっています。「コンパクト・プラス・ネットワーク」というあり方は、自然な流れといえます。

 今、『まとまり』と『つながり』という2つの方向で「ネットワーク型コンパクトシティ長崎」を目指していますが、まず、『まとまり』とは、都市機能の集積をつくることです。ある程度の集積がなければ、利用する人口が減り、デパートや病院といった、そのほかの機能も成り立たなくなります。
 一方、『つながり』とは、どこに住んでいても都市機能を利用しやすい環境をつくるということです。交通網だけではなく、たとえば近くの公民館の図書室に行けば、中央の大きな図書館の本が借りられるとか、物流も含めたネットワークをつくっていくことは大切なことです。

 ――商業ビルの跡地に賃貸マンションが建つなど、まちのなかに住む人が増えているようですね。

 田上 長崎市の場合は、とくに昭和40年代以降に、斜面地に家が建っていったという経過がありますが、高齢化にともない、都市機能が集積しているところで暮らすのが便利だということで、斜面地に住んでおられた方が下に降りてこられているという流れがあります。まちなかの人口が増えているという傾向は確実にありますね。以前は、「商店街」という捉え方をしていましたが、今のまちなかは病院があったり、交通の結節点があったり、歴史、文化を継承するお祭りの場であるなど、商店も買い物という機能の1つとして、都市機能が集積した場として捉えれば、より魅力的になっていくと思います。

(つづく)
【聞き手・文:山下 康太】

<プロフィール>
田上 富久(たうえ・とみひさ)
1956年12月10日生まれ。80年10月、長崎市役所に入所し、観光部観光振興課主幹、企画部統計課長などを務める。2007年4月の長崎市長選挙で初当選。現在3期目。日本非核宣言自治体協議会会長、平和首長会議副議長、長崎県市長会会長、全国市長会相談役を務める。趣味は、映画鑑賞とさるくガイド。

 
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