2024年04月27日( 土 )

韓国の家計負債に危険信号(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 国際決済銀行(BIS)の発表によると、韓国の第2四半期の家計負債比率は対GDP比で96%であることが明らかになった。家計負債額は、1,637兆ウォンである。オーストラリア、カナダ、オランダなど、韓国より家計負債比率(対GDP比)の高い国はいくつかあるが、専門家は韓国の家計負債比率が急激に高まっていることに対して、警鐘を鳴らしている。

 今回のBISの調査対象国の三十数カ国の家計負債比率は、平均で61%であった。韓国の家計負債比率はかつてそれほど高くなかったが、アジア通貨危機と世界金融危機という2度の経済危機を経て、家計は弱体化し、負債が膨張している。

 韓国の家計負債比率(対GDP比)は2000年に45%であったが、2000年代に入って家計負債が増加し続けたため、10年に76%、19年の四半期には92.1%になり、さらに数カ月で3.9%も増加して現在の96%となった。韓国の家計負債は、金額が膨大であるうえに、急速に増加しているため警戒されている。韓国の家計負債は、なぜ急激に増加しているのか。

 1つ目に、若者の旺盛な消費がある。たとえば、韓国でほとんどの小学生がもっているスマートフォンは、便利ではあるが、通信料金などの費用が必要だ。とくに、新しいモデルが発売されるたびに、はやる気持ちを抑えきれずに新規機種にすぐ買い替える人もいる。

 機器の代金は通信料金と一緒に分割で請求されるため、初期費用の負担の大きさをあまり実感させないが、高い買い物であることは間違いない。韓国はとくに面子を大事にする文化をもつため、近所の人がテレビやスマートフォンを買い替えると、足並みをそろえて自身も購入してしまう人が多い。

 2つ目に、韓国経済は2度の金融危機を経験したため、企業は経営のかじ取りに慎重になり、設備投資などに消極的になった。正社員の人材を減らし、パートやアルバイトなどの非正規社員を増やすことで、固定費を減らしている。結果的に企業にはお金が溜まるが、家計には収入の減少をもたらす。

 このことは、経済全体に占める家計収入の比率が61%へと減少した一方、企業収益の比率は27%に増加していることに如実に表れている。このような状況になると、企業は内部留保など潤沢な資金があるため、銀行から資金を借りる必要性は小さくなる。

 加えて、企業は銀行から資金を調達する間接金融より、株式や社債を発行して資金調達をする直接金融に頼ることが増えた。企業がお金を借りなくなったため、銀行は、余分な資金を運用するため、家計に対する融資を増やさざるを得ない。その結果、以前の銀行の貸し出し比率は企業がおよそ72%、家計はおよそ18%であったが、今は企業と家計の割合はおよそ半分ずつとなっている。

 3つ目に、韓国では低金利時代を迎え、銀行からお金を借りて不動産に投資する人が増えている。筆者は日本で土地神話の崩壊を経験したため、韓国でも同様の事態になると予測していたが、結果は異なり韓国では土地神話は崩壊していない。

 平均月給は300万ウォン前後である一方、マンションは10億ウォンを超える物件がざらである。このような状況では、人々は銀行からお金を借りてでも不動産に投資したいという誘惑にかられる。実際に銀行でお金を借りて不動産投資で成功を収め、味をしめている人が増えている。

(つづく)

(後)

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