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2021年01月26日 14:05

【企業研究】「凋落するメディア事業」〜西日本新聞社

 ブロック誌の雄として九州地区に君臨してきた(株)西日本新聞社だが、近年の業績は下降推移だ。20年3月期では本業の新聞発行を中心としたメディア関連事業で営業赤字に転落。その傾向は今期も続いており、半期決算でも本業は赤字の状況だ。

近年は撤退戦の様相

 デジタル社会の到来とともに、オールドメディアとして語られることになった新聞業界が置かれる状況は極めて厳しい。ご多分に漏れず九州を代表する西日本新聞社も、ここ10年ほどは撤退戦の様相だ。

 2009年に山口市、下関市、那覇市の支局を閉鎖し、山口県、沖縄県での発行を打ち切った。10年から宮崎県、鹿児島県の地方版を統合し「南九州ワイド版」としていたが、18年3月末で両県における「西日本新聞」「西日本スポーツ」の発行を打ち切った。19年にはグループ会社で広告代理店だった(株)西広を博報堂へ、(株)西日本新聞旅行は日本旅行へ、それぞれ売却。(株)西日本リビング新聞社は会社清算となった。こうした事業やグループのリストラに踏み切らざるを得ないのは、本業である新聞発行事業が不振を極めているからだ。新聞発行部数の落ち込みは業界全体のものであり同社に限ったことではないが、減少率から見れば同社の落ち込み幅は大きい。

 ABC調査によれば19年の朝刊発行部数は58万部余りだったが、20年4月段階では52万部弱。20年下半期では50万部を割り込む水準にまで低下している。かつては80万部と言われた発行部数も、ピークの6割程度にまで減少している。

本業の不振が顕著に

 発行部数の落ち込みは、そのまま業績に反映されている。同社の連結売上高はグループ企業が減った影響もあり、18年3月期の535億円が20年3月期では416億円にまで減少した。売上減少は今期も続いており、20年9月期(21年3月期上半期)では前期の207億円が163億円にまで落ち込んだ。

 同社グループの連結売上構成は、本業の新聞発行を中心とするメディア関連事業が大変を占めるが、セグメント別に見ると、その不振が顕著であることがよくわかる。20年3月期では、416億円の連結売上高のうち368億円を占めるメディア関連事業が、5億円を超える営業赤字に陥った。一方で40億円に満たない売上高の不動産事業が18億円を超える黒字を叩き出している。この傾向は今年も変わらず、半期で163億円の売上高のうち134億円を占めるメディア関連事業が4億円を超える営業赤字。一方の不動産事業は20億円の売上高で11億円の黒字だ。さらに深刻なのは、メディア関連事業の赤字幅が拡大していることで、昨年の7,300万円の赤字が4億2,200万円にまで膨らんだ。このままいけば通年での営業赤字は昨年を上回る可能性が高い。さらなる事業リストラや組織再編に踏み込まざるを得ない状況になる可能性が高いだろう。

部数減にコロナの影響も

 発行部数がピーク時の6割水準にまで減っても、本業のメディア関連事業で営業赤字を出しても、いまだ同社はキャッシュリッチ企業だ。自己資本比率は50%水準を維持し、130億円余りの現預金を保有している。今までの蓄積がいかに大きかったかがわかる数字だ。一方で業績不振にもかかわらず、現在の状態が保たれているのは、事業リストラや人員抑制策などにより、縮小均衡を続けてきたからにほかならない。業績を挽回する一手がなければ、この策はどこかで行き詰るのは必定だ。

 部数減少に加え新型コロナ感染症の影響もあり、新聞広告や折込広告、イベント事業などの業績も悪化した。こうした状況を考慮すれば、今期の連結売上高は300億円台前半に沈む可能性が高い。不動産事業への傾斜が強まり社内の士気の低下も囁かれる同社。メディアとしての反転攻勢に向けた再建策は、今のところ見当たらないようだ。

【緒方 克美】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:柴田 建哉
所在地:福岡市中央区天神1-4-1
設 立:1943年4月
資本金:3億6,000万円
年 商:(20/3連結)416億7,300万円

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