2024年04月15日( 月 )

【九州地方整備局】業界団体とともに魅力ある建設産業へ

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国土交通省九州地方整備局
建政部長 津森 洋介 氏

 地域のまちづくり・すまいづくり、公園・下水道等の整備を担い、建設産業の健全な発展を推進する国土交通省九州地方整備局建政部。職人不足など建設業界の抱える問題について、建政部長・津森洋介氏に同部の取り組みを聞いた。

担い手確保や処遇改善に向け、さまざまな働きかけを実施

国土交通省九州地方整備局 建政部長 津森 洋介 氏
国土交通省九州地方整備局
建政部長
津森 洋介 氏

    ──建設産業の健全な発展の推進を所管する九州地方整備局建政部として、現在とくに注力されていることは何でしょうか。

 津森 社会インフラ整備や防災・減災対策など、建設産業には「地域の守り手」として大変重要な役割を担っていただいています。その建設産業が、将来にわたって持続的に活躍していただけることが重要ですし、そのための担い手確保は喫緊の課題となっています。また、2020年12月に閣議決定された「防災・減災、国土強靱化のための5カ年加速化対策」など、国民の安全・安心確保を図る取り組みが措置された公共事業予算を迅速に執行するとともに、円滑な施工を確保するためにも、その担い手となる建設技能者の処遇改善や、中長期的な育成および確保の促進を図ることも重要です。

 こうしたことを受け、九州地方整備局では昨年、管内の専門工事業者の取り組みや課題などの実態を把握するため、各団体と個別で意見交換を実施しました。そのなかで、若手入職者確保や離職率上昇に苦慮していることや、週休2日を進めるには適正な工期設定が必要など、改めて業界の現状や課題について生の声をいただきました。社会保険加入の徹底など処遇改善への取り組みを進めていくとともに、休暇を考慮した適正な工期の設定などについては、原則すべての直轄土木工事で週休2日を前提とした工事の発注を行うほか、地方公共団体等の取り組みも進めるよう、関係者が参加する会議や講演会などを通じて、働きかけを行っています。

 加えて、建設業の請負契約における不適切な取引が依然として指摘されていることから、適正化をより一層推進することも重要です。そこで、「建設業法令遵守ガイドライン」のさらなる浸透を図るため、建設業法セミナーや講習会などを実施し、周知を図っているところです。

 ──事業者からは、どのような相談が寄せられているのでしょうか。

 津森 とくに専門工事業者の方々からは、ダンピング対策への取り組みの強化について、ご意見をいただいているところです。ダンピング受注は、下請業者へのしわ寄せや技能労働者の賃金水準低下などにつながりかねず、担い手の確保・育成を困難とさせるものです。

 九州地方整備局では、建設業法令遵守推進本部の活動として、建設業取引の適正化を図るために、建設業法に基づく立入検査を実施してきたところですが、とくに本年度の立入検査では、適正価格での契約締結や標準見積書の活用状況、見積もりに基づく協議状況などについて、重点事項として調査を行っているところです。

社会保険の加入促進など若い世代の確保・定着に向けて

 ──建設業界全体の課題として、社会保険の未加入率が高いことが挙げられます。この課題の解決に向けては、どのような取り組みを行っていますか。

 津森 社会保険の加入促進については、技能労働者の処遇改善や、法定福利費を適正に負担する企業による公平・健全な競争環境の構築の観点から、12年度より社会保険加入対策を進めてきています。また、20年6月の建設業法改正により、10月から建設業許可の取得要件として社会保険加入が義務化されたことで、企業単位・技能者単位ともに保険加入率の上昇が見られるなど、一定の効果が出ているところです。

 その一方で、法定福利費などの労働関係諸経費の削減を意図して、技能者の個人事業主化――いわゆる“一人親方化”が進んでしまう懸念や、労働基準法令規制強化の影響もあって、偽装請負の一人親方として従事する技能者も一定数存在するものと認識しています。そのため、「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」の改訂を行い、請負関係にある一人親方については、実態が雇用労働者であれば早期に雇用関係を締結して適切な社会保険に加入させることなどが明確に規定されたところです。

 こうした社会保険加入の徹底と、法定福利費を内訳明示した見積書の活用についての働きかけやガイドラインの周知については、引き続き建設企業への講習会等の機会を通じて行っていきます。

建設現場 イメージ    ──建設業界が直面する高齢化などによる人材の減少、いわゆる「2025年問題」についての対策はいかがですか。

 津森 他産業と比べて高齢化が進んでいる建設業では、近い将来、高齢者の大量離職による担い手減少が見込まれており、将来の建設業を支える若い入職者の確保と定着は喫緊の課題となっています。そこで、若い世代にキャリアパスを示し、技能・経験に応じて処遇を改善することを目的とした「建設キャリアアップシステム」(以下、CCUS)の普及・活用促進が重要です。

 CCUSは、現場を支える技能者が、技能・経験に応じて適切に処遇され、働き続けられる環境をつくることで、担い手確保につなげるものです。このCCUSを業界共通の制度インフラとして定着させるために、引き続き関係団体と連携しながら、普及・活用促進に取り組んでいきます。

 また、CCUSの活用をはじめ、技能と経験に応じた給与の引き上げやキャリアパスに基づく計画的な人材育成など、「建設工事の担い手の育成確保」に向けて顕著な功績を上げた企業に対しては、表彰を行うこととしています。

 このほかに九州地方整備局では、建設産業のものづくりの楽しさを知ってもらうため、行政と業界が一体となって建設産業の魅力を紹介するとともに、職人の技を体験してもらう「学校キャラバン」を17年度から実施しており、これまでに8件開催しました。あいにく現在はコロナ禍の影響で実施できておりませんが、状況が落ち着きましたら、再開したいと考えています。

 なお直轄工事では、これまで優良工事のうち、品質確保向上に貢献した優良下請企業の表彰を行っていましたが、加えて、下請企業の技術者・技能者の育成を図るため、22年度からは優良下請企業の技術者・技能者を表彰する制度の新設も検討しているところです。


<プロフィール>
津森  洋介
(つもり・ようすけ)
福岡県生まれ。2014年9月、国土交通副大臣秘書官となり、16年4月に住宅局建築指導課建築業務監理室長、18年6月には水管理・国土保全局下水道部下水道企画課管理企画指導室長を歴任し、19年7月より九州地方整備局建政部長を務める。

【内山 義之】

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