2024年05月04日( 土 )

【九州地方整備局】業界団体とともに魅力ある建設産業へ

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国土交通省九州地方整備局
建政部長 津森 洋介 氏

若者が希望をもって働ける「新3K」の魅力的な産業に

国土交通省九州地方整備局 建政部長 津森 洋介 氏
国土交通省九州地方整備局
建政部長
津森 洋介 氏

 ──専門工事業を含めた建設業界全体の解決すべき課題や、労務単価や労働環境問題などについて、行政の視点で自由なご意見をお聞かせください。

 津森 建設産業を、「給与が良く」「休暇が取れ」「希望がもてる」――「新3K」といわれる魅力的な産業とするためには、「処遇改善」や「働き方改革」「生産性向上」をより一層進めていく必要があります。

 まず「処遇改善」については、社会保険への加入徹底を進めるとともに、公共工事設計労務単価を9年連続で引き上げ、技能者の賃金引き上げを進める取り組みを行っております。これを通じて、適正利潤の確保や、さらに賃金の引き上げにつながるという好循環が続くよう、発注者や元請事業者、下請事業者などのすべての関係者が、この労務単価の水準を踏まえたうえでの適切な請負代金での契約締結が大切だと考えています。とくに、未来を切り拓く「新しい資本主義」の起動に向け、企業の賃上げを強力に促していきます。

 「働き方改革」については、24年度から時間外労働の上限規制が適用されることになるため、「新・担い手3法」に基づき、工期の適正化や施工時期の平準化の推進、週休2日の確保に向けた取り組みを進めています。工期の適正化については、20年7月に中央建設業審議会が作成・勧告を行った「工期に関する基準」において、適正な工期の設定にあたって考慮すべき事項が示されており、公共工事・民間工事問わず、この基準の周知を行っているところです。直轄土木工事においても、原則すべての工事で週休2日を前提とした工事の発注を行っているところです。

 適正な工期設定のためには発注者の理解が必要となりますので、九州地方整備局では、九州・沖縄ブロック土木部長等会議や九州ブロック発注者協議会などを通じて周知を図るとともに、これまで国土交通省と総務省の連名で、地方自治体財政部局・契約部局に対して、休暇などを考慮した適正工期の設定などの要請を行ってきました。加えて、九州地方整備局では、昨年12月に管内各県・政令市の建政部関係の補助・交付金を担当する部局に対しても、同様の対応を求めたところです。

 また、公共工事では週休2日の取り組みが進んでいますが、民間工事でも浸透させていくことが重要です。そのため、民間事業者が工事発注にあたって留意すべき事項をまとめた資料を作成し、周知を図っているところです。

 最後に「生産性向上」については、ICT施工をはじめとするi-Constructionの推進だけでなく、AIやUAV(無人航空機/ドローン)などのデジタル技術を活用した技術開発を行うとともに、新技術を積極的に活用し、DXを推進しているところです。

出典:国土交通省(日建協「2020時短アンケート」を基に作成)
出典:国土交通省(日建協「2020時短アンケート」を基に作成)

建設産業全体の健全な発展のために

 ──昨年12月、九州鉄筋工事業団体連合会の通常総会で講話をされたとお聞きしています。鉄筋工事業の特徴や課題については、どのようにお考えですか。

 津森 鉄筋は、ビルなどの建築物をはじめ、橋梁やトンネル、高速道路などほとんどの構造物に用いられています。建物が完成したときには外からは見えませんが、鉄筋工事業は図面に従って鉄筋の加工・組み立てを行い、強固な構造物をつくり上げることで、安全・安心の建物づくりに極めて重要な“縁の下の力持ち”的な役割を担っておられると認識しています。

 今後も引き続きこの役割をはたしていただくためには、業界として若年入職者を確保して定着させ、技術力を継承していただかなければなりませんが、これは鉄筋工事業だけでなく、専門工事業全体の課題だと考えています。先ほどお話ししたような、技能者の賃金引き上げにつながる取り組みや社会保険の加入促進、CCUSの普及を進めていくことが重要となっていくと思います。

 ──最後に、鉄筋工事業を含む専門工事業者へのメッセージをお聞かせください。

 津森 建設産業は、多くの方々の力を借りてモノをつくる分野であり、なかでも専門工事業者は、施工に直接携わる重要な役割を担っています。そうした専門工事業が、「若者が入りたい」と思える魅力ある業界になっていくことがとても重要です。

 そのため、建設産業の健全な発展を推進していく立場の九州地方整備局建政部では、担い手確保のための「処遇改善」「働き方改革」「生産性向上」に向けては、九州でできることは九州で取り組みを行っていくほか、全国的なものや制度的なものについては、本省との連携も積極的に図っていく所存です。そして、建設産業を「給与が良く」「休暇が取れ」「希望がもてる」――「新3K」といわれる魅力的な産業にしていくために、業界団体と一体となってさまざまな取り組みを進めていきます。

(了)

【内山 義之】


<プロフィール>
津森  洋介
(つもり・ようすけ)
福岡県生まれ。2014年9月、国土交通副大臣秘書官となり、16年4月に住宅局建築指導課建築業務監理室長、18年6月には水管理・国土保全局下水道部下水道企画課管理企画指導室長を歴任し、19年7月より九州地方整備局建政部長を務める。

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