変貌しつつある大阪港~IRという“バクチ”で儲かるのは誰か?(後)
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裏と表の世界をつなぐ、カジノビジネス
IR誘致はすでに既定路線となっているが、「ギャンブル依存症、破産者が増える」「マネーロンダリングの温床になる」「日本人の所得が外資に吸い取られる」など国民からの批判も依然根強い。
ギャンブル依存症や破産者については、カジノ事業者に一定の抑制ノウハウがあるだろうが、ギャンブルである以上、ゼロにすることは不可能だ。セラピストなどによるケアを充実させたとしても、最終的には自己責任で終わるのがオチだろう。つまり、リスクはカジノが営業を続ける限り、いつまでも残る。マネーロンダリングの根絶も難しい。カジノには、「ハイローラー(1回1,000万円以上賭ける客)」のほか、1回1億円以上賭ける客「ウェール(鯨)」と称される客が存在する。そういう客のなかには、カジノで買った(負けた)ことにして、数億円をキレイな金にしてやりとりする者たちがいる。つまり、カジノには裏の世界の人間たちが、汚れた金をキレイにしてやりとりできる金融機関的な役割があるわけだ。某国が輸出した武器の送金手段として、カジノが利用されているという話もある。裏の世界と表の世界をつなぐのがカジノビジネスの本質であることは忘れてはならない。
「日本人の所得が外資に吸い取られる」のは、その通りだ。それこそが、カジノ事業者が日本参入する理由だからだ。実施法では、外国人は入場無料なのに対し、日本人(日本在住者)は6,000円の入場料をとられる。一定の抑制にはなるが、自国民の入場を禁止する韓国などのカジノに比べると、効果は限定的だ。入場規制は、依存症や破産にも関わるポイントだが、今回、日本政府はそれをしなかった。その理由は、カジノ事業者にとって、日本人の所得を吸い取るという“ウマ味”が減るからだ。
新型コロナウイルスの影響により、IRをめぐる政府などの動きは停滞しつつある。たとえば、国土交通大臣によるIRに関する基本方針の策定は、当初は今年1月の予定だったが、7月以降に延期された。カジノ運営に関する許認可、監督審査などを行うカジノ管理委員会(北村道夫委員長)は当初の予定通りに今年1月に発足していることを考えると、IRをめぐる足並みが乱れ始めていることがうかがえる。
コロナ禍は、加熱していたIRの動きを一気に冷やしたといえる。今年1月、秋元司衆議院議員のIR汚職逮捕などの比ではない。たとえば、横浜IRに色気を見せていたラスベガス・サンズが今年5月になって撤退を表明したのも、コロナ禍と無関係ではない。大阪府市は今年6月、26年度を予定していたIRの開業時期を1~2年延期すると発表した。「事業者との協議が進んでいない」ことを理由に挙げているが、儲かるかどうかわからなくなったビジネスに対して、営利企業が取る態度はどこか似通っている。
1兆円以上を目論んだ大阪IRの経済波及効果も、もはや「取らぬ狸の皮算用」に過ぎなくなっている。つまり、IRそのものが儲かるかどうかわからない“バクチ”に成り下がっているわけだ。そう考えると、我々国民は図らずも、コロナ禍によって、IRビジネスの本当の姿を垣間見つつあるのかもしれない。
(了)
【大石 恭正】
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