産学官、地域と研究開発で積極連携〜福工大による福岡東部のまちづくり(前)
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福岡工業大学
まちづくりを考えるうえで、大学などの高等教育機関の存在は重要だ。大学があることで学生や教職員などの人が集まり、地域で飲食やモノの購入などで消費する機会が増える。学校周辺には住宅のほか、商業施設も集積するようになり、経済的な効果も高まる。福岡市東区和白の福岡工業大学も地域とつながりをもち、成長する学園都市を支える機能をはたしている。
学園都市の中核として
学園都市のなかで大学がはたす役割は、将来の社会を支える人材を輩出すること。学術研究や実用的な研究を行い、その研究成果を民間企業へ技術移転する。産業基盤の強化や企業との共同研究によって、地域企業の研究開発を後押しすることにもつながる。また、地域社会や自治体と関わりや連携を図るなかで、地域の学習機会の創造や地域が抱える行政課題を解決することも期待される。
福岡工業大学は学園都市の中核として、地域とどのように関わっているのか。研究、連携、地域貢献への取り組みと成果を見てみよう。
研究開発
大学での研究は、基礎的研究や実用化のための研究など、分野やテーマは多岐にわたっている。たとえば、新型コロナウイルス感染拡大防止のために、避難所の“三密”防止など災害時の対策が求められるようになったことを受け、情報工学部の石田智行准教授の研究室は、豪雨や地震など自然災害の発生時に新型コロナウイルス感染防止と合わせた対策を行うための意思決定支援システムを開発した。災害時、刻々と更新される災害情報を電子化してモニターやPC、タブレットで共有し、迅速な災害対応と密を避ける感染拡大防止を両立するためのシステムとして実際に使えるツールの開発にも取り組んでいる。
産学連携
近年、大学が民間企業などと連携して研究開発を行う産学連携による研究開発やイノベーション創出への期待が高まっているなか、総合研究機構産学連携推進室が中心となって、産業界との連携を積極的に推進している。波及効果の高い研究を実施できるよう、地域が抱えるニーズの収集に努め、とくに食品やエネルギー、材料、環境および医工関連の分野において企業等との共同研究による成果が進展しているようだ。
その1つが、情報システム工学科・徳安研究室が開発している、「内視鏡外科手術における鉗子操作訓練システム」である。このシステムは、指導専門医が側にいなくても訓練ができるというもので、ベテラン外科医の鉗子操作を記録し、鉗子をモーターで動かして再現できることが最大の特徴。訓練者は、画面を見ながら鉗子に手をかけるだけで手技を体得できる。メーカーと連携して製品化を進め、大学医学部などで広く活用される訓練システムとしての普及が期待されている。
食品分野では、「焼酎粕など、食品廃棄物からの電池製造」という研究も進んでいる。電気工学科・田島研究室が取り組んでいるテーマで、九州で大量に発生する焼酎粕を用いた電池の作成である。高温状態での特殊な処理方法により焼酎粕から活性炭を作成し、「電気二重層キャパシター」と呼ばれる電池に用いるものだ。低コスト電池としての実用化が期待されており、焼酎粕以外にユズ残渣や水産系廃棄物からの作成にも取り組む。焼酎粕や廃棄物のサンプル確保は県内外の食品加工メーカーの協力を得ており、高容量化につながる研究も進めている。
こうしてさまざまな実社会のニーズに対応した研究活動に取り組み、課題解決に貢献している。
(つづく)
【宇野 秀史】
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