2024年04月26日( 金 )

村井嘉浩宮城県知事暴挙を許さない

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 NetIB-Newsでは、「日本列島は実際にはいまなお『原子力緊急事態宣言』の下に置かれており、この状況下で宮城県の村井嘉浩知事は東北電力女川原子力発電所の再稼働に同意した。ハゲタカ資本の命令通りに動いている同知事を一刻も早く退場させるべき」と訴えた11月11日付の記事を紹介する。


2011年3月11日14時46分、宮城県牡鹿半島の東南東沖130kmの海底を震源として、東北地方太平洋沖地震が発生した。
地震の規模は、日本における観測史上最大のマグニチュード9.0であると発表された。

同日、午後7時3分、原子力緊急事態宣言が発令された。
「平成23年(2011年)16時36分、東京電力(株)福島第一原子力発電所において、原子力災害対策特別措置法第15条1項2号の規定に該当する事象が発生し、原子力災害の拡大の防止を図るための応急の対策を実施する必要があると認められたため、同条の規定に基づき、原子力緊急事態宣言を発する。」
これが「原子力緊急事態宣言」の全文。

当時の枝野幸男官房長官は、
「原子炉そのものにいま問題があるわけではございません。万が一の場合の影響が激しいものですから、万全を期すということで、緊急事態宣言を発令して、最大限の万全の対応をとろうということでございます。放射能が現に漏れているとか、現に漏れるような状況になっているということではございません」
と述べたが、このとき、福島第一原発はすでに全署停電=ステーションブラックアウトに陥っていた。

原子炉が電源を喪失すれば、原子炉を冷却する装置が作動しなくなる。
原子炉内の水分が完全に蒸発し、核燃料がむき出しの状態になれば、燃料が溶融を始めるのは時間の問題となる。
2011年3月11日夜の時点で、フクシマ原発の炉心溶融=メルトダウンが明確に想定されていた。

福島第一原発では、地震発生から2時間も経過してない当日15時42分に原子力安全・保安院に対して、東京電力から福島第一原発1、2号機で炉心を冷やす緊急炉心冷却装置(ECCS)が稼動しなくなったとの報告が入っている。

NHKは2011年3月12日正午のニュース放送で次のように放送した。
「原子力発電所に関する情報です。えー、原子力安全保安院などによりますと、福島第一原子力発電所一号機では、原子炉を冷やす水の高さが下がり、午前11時20分現在で、核燃料棒を束ねた燃料集合体が水面の上、最大で90㎝ほど露出する危険な状態になったということです。
このため消火用に貯めていた水など、およそ2万7000Lを仮設のポンプなどを使って水の高さをあげるための作業を行っているということです。この情報を繰り返します。」

フクシマ原発の炉心溶融=メルトダウンが始動したことをNHKが報じたのだ。
ところが、この原稿が読み上げられた後、約7秒間の沈黙があり、横から、「ちょっとね、いまの原稿使っちゃいけないんだって」
という声が入った。

https://www.YouTube.com/watch?v=H8r4K-xOjGQ

キャスターは原稿を差し替えて、
「改めて原発に関する情報です。福島県にある福島第一原子力発電所の一号機では、原子炉が入った格納容器の圧力が高まっているため、東京電力が容器内の空気を外部に放出するベントの作業を始めましたが、格納容器のすぐ近くにある弁を開く現場の放射線が強いことから、作業をいったん中断し、今後の対応を検討しています。」
と別の原稿を読み上げた。

経済産業省原子力安全・保安院がメルトダウンの事実を認めたのは同年6月6日。
事故発生の翌日に確認された原発メルトダウンの事実を政府は約3カ月隠ぺいした。
NHKもいったんメルトダウンの事実をニュースで伝えながら、その後、この事実を隠ぺいした。

政府の緊急災害対策本部における震災当日3月11日深夜の文書には、福島第一原発2号機で22時20分頃から炉心損傷が始まるとの予測結果が記載されていた。
翌12日に同院の中村幸一郎審議官が記者会見で「炉心溶融が進んでいる可能性がある」と発言したが、同日夜に更迭された。
菅直人内閣が事実を隠ぺいしたことは明白である。

2011年3月11日に発令された「原子力緊急事態宣言」はいまなお解除されていない。
ICRP(国際放射線防護委員会)のガイドラインに基づく環境省の基準では年間1ミリシーベルトが公衆被曝の上限。

ところが、菅義偉内閣は日本の市民に年間20ミリシーベルトの被曝を強制する措置を採用している。
日本列島がいまなお「原子力緊急事態宣言」の下に置かれているために、この高線量被ばくを認める「違法措置」が放置されている。

安倍首相が2013年9月7日のブレノスアイレスにおけるIOC総会で発した
「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御されています」という発言は真っ赤なウソである。
日本列島はいまなお「原子力緊急事態宣言」の下に置かれている。

この状況下で、被災県の1つである宮城県の村井嘉浩知事が東北電力女川原子力発電所の再稼働に同意した。

村井知事は水道民営化をも強行に推進している。
「維新」との関係が深く、ハゲタカ資本の命令通りに動いている知事であると論評することができる。
宮城県の主権者は一刻も早く村井知事を退場させるべきだ。

フクシマ原発事故はまったく収束していない。
小出裕章氏の著書
『フクシマ事故と東京オリンピック【7カ国語対応】』
“The disaster in Fukushima and the 2020 Tokyo Olympics”(小出裕章著、径書房)
https://amzn.to/2OAIdzO
をすべての国民が読むべきだ。

1年間に20ミリシーベルトという被曝量は、「放射線業務従事者」に対して国が初めて許した被曝の限度である。
「放射線業務従事者」だけが「放射線管理区域」への立ち入りを許される。
この「放射線管理区域」において許容される放射線被曝上限が年間20ミリシーベルトである。

「放射線管理区域」においては、放射線業務従事者であっても、水を飲むことも食べ物を食べることも禁じられている。
寝ることも禁じられ、トイレすらなく、排せつもできない。

小出氏はこう指摘する。
「ところが、国は、今は緊急事態だとして、従来の法令を反ゆえにし、その汚染地帯に数百万人の人を棄て、そこで生活するように強いた。」

菅義偉内閣は日本の一般市民に年間線量20ミリシーベルトの地点への居住を強制している。
年間線量が20ミリシーベルトを下回れば、避難措置を解除し、一切の支援を行わないことにしている。
年間20ミリシーベルトに近い高線量放射能被曝地から避難した住民に対する住居費の支援は打ち切られた。
国民を棄て去り、原子力緊急事態宣言を発令したまま、欲得のためだけに五輪開催が強行されようとしている。

菅義偉首相は10月26日の所信表明演説で、国内の温暖化ガス排出を2050年までに「実質ゼロ」とする方針を表明したが、原発ゼロを明示しない。
明示しないどころか、原子力発電をベースロード電源と位置付けているのだ。
この点に温暖化対策政策の最大の闇が隠されている。

国連が提示したSDGs。

持続可能な開発目標と題して、持続可能な世界を実現するための17のゴールと下位レベルの169のターゲットが提示されている。
このなかに「地球環境」が提示されているが、このことを根拠に「原子力ムラ」が原発推進で暗躍している。

地球環境は重要な課題だが、地球環境を大義名分とする原発推進は容認されない。
地球環境対策論議で絶対に見落とすことのできない視点は、地球温暖化対策を主張する者が原発ゼロを厳しく主張しているのかどうかだ。
温暖化対策を隠れ蓑にした原発推進論が明白に存在する。

フクシマ事故で私たちは国土を喪いかけた。
多くの偶然が重なって国土喪失の事態を回避できただけに過ぎない。

日本は世界最大の地震国と言って過言でない。
福井地方裁判所の樋口英明裁判長は大飯原発運転差し止め命令判決で大飯原発に1260ガル以上の揺れは発生しないとした関西電力の主張に対して次のように指摘した。

「大飯原発には 1260ガルを超える地震は来ないとの確実な科学的根拠に
基づく想定は本来的に不可能である。
むしろ、

1.我が国において記録された既往最大の震度は岩手宮城内陸地震における4022ガルであり、1260ガルという数値はこれをはるかに下回るものであること、

2.岩手宮城内陸地震は大飯でも発生する可能性があるとされる内陸地殻内地震であること、

3.この地震が起きた東北地方と大飯原発の位置する北陸地方ないし隣接する近畿地方とでは地震の発生頻度において有意的な違いは認められず、若狭地方の既知の活断層に限っても陸海を問わず多数存在すること、

4.この既往最大という概念自体が、有史以来世界最大というものではなく近時の我が国において最大というものにすぎないことからすると、1260ガルを超える地震は大飯原発に到来する危険がある。」

日本の原発の耐震性能は発生し得る地震の揺れに耐える設計になっていない。
この1点だけを捉えても、原発の稼働を許すという選択肢はあり得ない。
東日本大震災で塗炭の苦しみに直面した宮城県の人々は、村井知事の暴挙を断じて許してならないと思う。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

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