2024年04月26日( 金 )

スターフライヤーが期待する北九州空港の将来像

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 (株)スターフライヤー(北九州市小倉南区)は2002年に神戸航空(株)として設立後、翌年にスターフライヤーに社名を変更して北九州市に拠点を移転。北九州の地元企業として事業展開している。現在、ANAとの共同運航便を含め、北九州空港で羽田便(1日11往復)、那覇便(1日1往復)のほか、福岡空港でも羽田便(1日8往復)、名古屋中部便(1日3往復)が就航。18年3月期の売上高は約380億円を計上している。北九州空港に拠点を置く航空会社として、空港のメリット、デメリットをどう考えているのか。今後、期待することは何か。同社経営企画本部経営戦略部の山口正樹氏に話を聞いた。

24時間運用なら創業期でも採算とれる

 ――スターフライヤーは、なぜ北九州空港を拠点に?

北九州空港の滑走路延長や軌道アクセス建設は、
「ビジネスチャンス拡大につながる」と期待を寄せる

 山口 当社は、設立時は「神戸航空(株)」という社名でした。神戸空港が新設されるという話と、旧北九州空港がリニューアルするという話があり、当初はどちらも24時間発着可能という予定でした。早朝深夜便をシャトル運航させることで、機材稼動率を上げてコストを抑え、「新規航空会社でも創業期に採算がとれる」という目論見でした。

 しかし、計画の途中で、神戸空港が24時間の発着を取り止めることになりました。神戸路線は「新規航空会社の創業期には向かない」と判断し、新北九州空港のみを拠点とした事業計画へ変更した経緯があります。

 北九州はTOTO、日産、安川電機、新日鐵住金などの大企業の主要拠点となっており、福岡空港へ流れていた出張需要の取り込みが見込めたのも、北九州を拠点とした大きな理由です。運航開始に必要な莫大な資金は、そういった多くの地元企業に出資をいただいたことで確保できました。株主となっていただいた後にも、継続的なご利用をいただけています。

 ――経営状況は?

 山口 10月28日に、国際線再参入として北九州=台北線を就航するわけですが、新規路線は軌道に乗るまでに時間がかかるため、それに耐えられるしっかりとした財務体質が求められます。当社は2014年3月期に大幅な赤字に陥りましたが、事業を立て直し、それ以降は毎年黒字へと回復。事業基盤、財務体質も整った今、国際線再参入の機会ととらえ、台北線を就航するのです。

 ――北九州空港のメリットとデメリットは?

 山口 当社は「ゆとりある座席」を売りにしている一方、座席数を少なくしているため、1席あたりのコストは高い。運航便数を増やすことで、コストを抑える必要があります。24時間空港として深夜早朝の運航が可能なことは、そんな当社にとって大きなメリットです。また、空港はコンパクトで、航空機の乗降、出入国に要する時間も短い。東九州自動車道路の完成により、大分北部地域へのアクセスが良好で、別府・湯布院へのインバウンド誘客も期待できます。

 デメリットは、公共交通アクセスがバスのみで、利用者にとっての利便性の向上が課題です。小倉都心部からの所要時間も約35分と、新幹線と地下鉄による福岡空港への移動時間と比較しても大差がないため、小倉市内から福岡空港への利用者もいまだに多い。とくに出張者にとっては、便数の多い福岡空港は、ふだんの利便性もさることながら、欠航などのイレギュラー時でも振替対象本数が多いので、選択する人が多いようです。昨今、海外のLCCなども多く就航するようになり、北九州空港の施設も狭隘化しています。館内の飲食、各種付帯施設も一層の充実を期待しています。

空港内外のあらゆるインフラ拡充を

 ――滑走路延長、鉄道アクセスなどの構想がありますが・・・。

 山口 当社が運航するA320は現行滑走路長でも十分ですが、北九州空港の利活用推進のために滑走路延長は必須。インバウンド市場を牽引する多くのエアラインが北九州空港へ飛来することは、当社の国内・国際線への乗り継ぎ旅客、航空貨物の増加に寄与すると予想しています。また、旅客数の増大に併せたアクセス(軌道)、空港施設の拡充へとつながる期待がもてます。北九州空港を中心とした地域経済の発展が、当社の新たなビジネスチャンスにつながることを期待したい。

 ――空港の民間委託については?

 山口 空港民営化によって、空港機能の充実、旅客数の増大、アクセスの強化、ひいては地域経済の発展につながるのであれば、当社にとっても、良い相乗効果が生まれるのではないかと期待しています。ただ、現時点ではまだ規模の小さい北九州空港が本当に民営化によって利益を生み出せるのか、福岡空港との一体運営・連携がどうあるべきか、当社も非常に関心を寄せるところです。

 ――国、北九州市などに期待することは?

 山口 北九州空港が24時間運用の強みを生かし、福岡空港との一体運営・連携を図るのであれば、両空港を結ぶ高速軌道を含めたアクセスのより一層の充実が必須です。福岡県一帯が東アジアの経済・文化・物流あらゆる分野の中心となり、永続的な発展を遂げるための確固たる土台として、空港周辺部のあらゆるインフラの拡充をさらに推し進めていただきたいと思います。

【大石 恭正】

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