【唐津街道中膝栗毛/前編】開発の波に呑まれ、往時の面影はわずか 唐津~博多の旧宿場町
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前原(糸島市)
往時の雰囲気が色濃い、糸島市の中心部
前原宿は、現在のJR筑肥線・筑前前原駅の北側、国道202号から1本北の通りを街道筋とした、福岡藩管轄の宿場町であった。福岡藩領としては最西端に位置し、周辺は福岡藩のほかに、幕府領や唐津藩領、中津藩領、対馬藩領などが入り乱れていたため、藩境の宿場として、関番所(旅人や通行者、荷物の改めなどを行う施設)が置かれていたとされている。前原宿には、藩主の領内視察や他大名の参勤交代の際に本陣として利用した藩主の別邸「御茶屋」を中心に、町茶屋や郡屋、代官所などが置かれていたほか、人馬継所(荷物や駕籠を運ぶ人や馬の交替場所)や数軒の旅籠があったとされ、参勤交代の大名行列や多くの旅人で賑わったという。
現在の前原宿では、街道筋などを中心に古い家屋や追分石碑、人馬継所跡などもあるほか、地面にはレンガ色のタイルが敷設され、街道の雰囲気を醸し出している。また、商店の軒先には「前原宿」の名前が入った木製の看板がかかっているところもあるが、この看板は焼き肉店などにもかかっているため、宿場町の雰囲気を醸し出すための地元のまちづくりの一環のようだ。また、建設・解体アタッチメントのレンタルを主業とする油機エンジニアリング(株)(太宰府市)が、前原宿で商売を営んでいた豪商・西原家の建物(1901年築)を動態保存し、食事処兼カフェの「古材の森」として利活用しているケースもある。古い町屋を保存しながら、そこに新たな価値を付加して利活用していくのは、ユニークな取り組みといって差し支えないだろう。このように前原宿は、唐津街道における旧宿場町のなかでも、往時の面影をとくに色濃く残している場所の1つだ。とはいえ、街道筋の古い建物が取り壊されてマンションなどに建て替わるなど、ここも時代の流れによる開発の波に呑まれつつある。
現在は、糸島市役所が近くにあることもあって、主に筑前前原駅の駅前や国道202号沿いなどで開発が進み、市街地を形成。周辺一帯は糸島市の中心部となっている。その糸島市役所では現在、現庁舎の老朽化にともなう新庁舎への建替えプロジェクトが進行。総事業費64億9,000万円をかけて行われる一大プロジェクトで、24年1月の供用開始を目指している。そのほかの民間によるマンション開発の動きとしては、辰巳開発(株)(北九州市八幡西区)による「セレンシオ前原ステーションイースト」(34戸、19年9月竣工)などがある。
【坂田 憲治】
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