2024年04月26日( 金 )

進行する天神ビッグバン&博多コネクティッド(1)

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 今号で「I・Bまちづくり」は第50号を迎えた。本紙ではこれまでに、福岡都市圏をはじめとした各エリア・各都市の開発動向やまちづくり施策などについて数多く取り上げてきたが、なかでも2017年2月末発刊の創刊号から折に触れて継続的に取り上げてきたのが、天神ビッグバンおよび博多コネクティッドなどの福岡都心部における再開発プロジェクトだ。今回、本誌第50号の節目に、これらの再開発プロジェクトを改めて振り返るとともに、現在の進捗状況などを見ていきたい。

天神ビッグバン

天神ビッグバン

2つの緩和策で建替え誘導、期限は26年末まで

  現在、福岡市の中心市街地である天神は、「天神ビッグバン」による再開発の真っ只中にある。とくに明治通りの沿線では、複数の大型プロジェクトが進行。“天神の顔”でもあったいくつかのビルの解体・撤去などが相次ぐ一方で、昨秋開業の「天神ビジネスセンター」や今冬の開業を控える「福岡大名ガーデンシティ」などの先鋭的な新ビルの姿もあり、まちが生まれ変わろうとする蛹化の時期を迎えている。

 そもそも2015年2月に始動した「天神ビッグバン」は、老朽化の進行などにより更新期を迎えたビルを、規制緩和などによって付加価値の高い新たなビルへの建替えを誘導することで、新たな空間と雇用を創出しようというプロジェクトだ。天神地区において、「グローバル創業・雇用創出特区」による「航空法の高さ制限の特例承認」を獲得したことをきっかけとして、そこに福岡市の独自施策として「容積率の緩和」を追加。この高さ制限と容積率という2つの緩和措置によって、建替えビルの増床を実現し、都市機能の大幅な向上を図っていこうというのが骨子になる。また、雇用創出に対する立地交付金制度の活用や創業支援、本社機能誘致などのソフト面の施策も行い、ハード・ソフト両面からの施策を組み合わせることで、アジアの拠点都市としての役割や機能を高め、新たな空間と雇用を創出していこうというプロジェクトとなっている。対象となる範囲は天神交差点から半径約500m内で、面積にして約80haとなるエリアだ。 
 16年3月には、ビル建替えを促進するために、魅力あるデザイン性に優れたビルにインセンティブを付与する「天神BBB(ビッグバンボーナス)」を創設。天神BBBの認定を受けることで、容積率緩和制度の拡大や、テナントの優先紹介、地域金融機関による専用の融資商品、行政による認定ビルのPRなどのさまざまなインセンティブが付与される。 
 これらの取り組みにより、当初は24年までに30棟の民間ビルの建替えを誘導。延床面積を1.7倍に拡大するとともに、雇用を2.4倍に拡大し、約2,900億円の建設投資効果と、建替え完了後からは新たに毎年約8,500億円の経済波及効果を見込むとしていた。

 ところが、20年からのコロナ禍によって、世の中の状況が一変した。そこで福岡市は20年8月に、従来の建替えによる耐震化やオープンスペースの創出・活用などに加えて、ビルの「換気」「非接触」「身体的距離の確保」「通信環境の充実」などの感染症対策などを盛り込んだ取り組みを誘導する方向性を新たに策定。これらの取り組みを実施するビル計画には、市独自の容積率緩和制度を拡充することで容積率が最大50%上乗せされる。福岡市は天神ビッグバンの再開発を契機に、福岡市を世界に先駆けた「感染症対応シティ」へと変貌させていきたい考えだ。この新たな変更にともない、天神BBBの竣工期限が26年12月末まで延長。天神ビッグバンのプロジェクト期間も、当初の予定より2年間伸びたかたちとなった。 

天神ビッグバン

【坂田 憲治】

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