2024年04月27日( 土 )

【凡学一生のやさしい法律学】関電報告書の読み方~関電疑獄を「町の法律好々爺」凡学一生がわかりやすく解説(10)

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内部調査報告書の「隠された」結論

 内部調査報告書(以下、同書)は調査委員会の結論として、「本件収賄は、個人的利得のためでなく、企業活動を守るためのやむを得ない収賄であり、(発覚後は)賄賂を返却しており、違法性はない。」

 というものである。世論の反発はこの隠された結論に反発したものである。

 この結論は演繹的なものか、それとも帰納的なものか。これが筆者の強調したい論点である。法律家(もちろん裁判官を含む)の論文の最大の問題・欠点は、帰納的なものが、日本では数多く横行していることである。これは法理論の悪用に他ならない。

(注)
演繹的結論

 証拠と論理によって結論を導く論理論法。とくに証拠選択の恣意性が排除されるから矛盾の事実が存在しないことがその特徴の1つである。

帰納的論法
 日本の裁判官が多用する、結論先にありきの論法。ただし、論文の構造は証拠と論理によって結論を導いた形式になっているため、外形上は演繹的結論と区別できない。この論法の特徴は証拠選択に極端な恣意性が認められ(これを自由心証主義というらしい)、何よりも矛盾する証拠事実が場合によっては多数存在する。また、そもそも証拠と論理の関係そのものに不合理や矛盾があることが多い。帰納的論理については、論理的矛盾・証拠を1つ示すことで必要十分である。

 本件に関して矛盾背理の1つを示せば、それは「企業(活動)を守るためには、賄賂の収受がやむを得ない唯一の方法である」とする論理である。返却することが唯一の正しい対応であることは中学生にでも理解できることである。

 返却しても倍返しされるとの弁解は、その倍返しを返却すれば成立しない弁解であり、返却すれば業務妨害を受けるとの弁解は業務妨害の具体性も現実性もまったくない弁解である。一地方公務員に如何なる妨害行為が可能というのか。少なくともMが実現可能な具体的な妨害例を示す必要がある。

 ただし、Mが関電役員らの違法行為、犯罪行為を知って、その公表暴露を強制受領の理由(脅しの理由)としている場合には役員らが賄賂を渋々受領することは可能性として存在する。同書がまったく具体的妨害行為を究明しようとしなかったことは、そもそもこの口実が事件発覚後に考案された可能性が大であることを示している。

(つづく)

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