“アート思考” でとらえ直す都市の作法(3)
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【② 日本社会(文明)の歴史】
文明から文化へ。
日本では人口の6割以上が、国土のわずか3%の都市部に住んでいる。14世紀から約700年にわたって、都市に人が集まり続けるトレンドは世界中で続いてきた。2050年には、世界人口の3分の2が都市生活者になると予測されているが、その急増に対応するために、また多くの建設工事が行われていくことだろう。
文明が行き着いた先には、文化が求められる。高度成長時代を経て、日本は「文明」から「文化」へとギアをシフトできればよかった。“文明の卒業式”がプラザ合意(1985年)だったわけだが、そこで目指すべきお手本がなくなってしまったのだ。その時点から日本は、糸の切れた凧のようになってふわふわと漂流を始めてしまう。そのまま30年。平成はそういう30年だったように思える。
ヨーロッパは農業国から工業国に変わるのに500年近くかかっているが、日本はそれを50年足らずという猛烈なスピードでやってしまった。明治時代以降の日本は、欧米のお金や文化やアメリカの考え方がドバっと入ってきて、一気に成金に成り上がってしまった。それを使って文明を発展させていって、世界一流の仲間入りをしたつもりだったけれど、知識もないしマナーもなっていない。急激に成金になったから、文化レベルが追いつかなかった。だから、どれだけ成果を出すかというアスリートみたいな勝負を続ける文明の世界を、結果的に進むことを選んでいった。しかし今、「役に立つという価値」よりも「意味があるという価値」にモノゴトの価値観が移ってきている。「文明=役に立つ」「文化=意味がある」という、今後進むべき分かれ道に立っているのだ。
日本モデルの都市とは
東京という都市はとくに、「役に立つ」を目指した結果として乱造された産物だろう。効率や便利さを重視して、文化をないがしろにした開発を推し進めた。1950年代から80年代にかけた平成の前までの30年で、日本は都市計画までもアメリカモデルを追求し、狭い国土のなかで車を走らせ、良くも悪くも急速な経済成長を選んだ。
ヨーロッパは環境に配慮した経営にいち早く取り組み、今でいう持続可能性に軸足を置いた社会の在り方を進めてきた。経済だけでなく、環境や福祉に軸足を置いたヨーロッパモデルに転換していく、もしくはそれを内包した新たな「日本モデル」の在り方を今、模索する岐路に立つところだと思う。永続性に軸足を置いたかたちは、日本に古くから伝わる「三方よし」や渋沢栄一の「論語と算盤」と通じる。規模拡大よりも持続可能性を重視するDNAは、日本の経営に元々深く刻み込まれているものだと信じたいところだ。
<プロフィール>
松岡 秀樹(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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