2024年03月29日( 金 )

【凡学一生のやさしい法律学】関電報告書の読み方~関電疑獄を「町の法律好々爺」凡学一生がわかりやすく解説(12)

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内部調査報告書の逐条解説

(2)報告書の名宛人 -誰に宛てた報告書かー

 本件内部調査報告書はその名宛人を故意に無記載とした。文書の基本要件は内容および作成名義人と名宛人である。名宛人を表示すれば、国民は誰もが、本件報告書が取締役会の指示委託による内部調査であり、文責者らが、いかにデタラメな内容を記載しても一切責任を負わない法的関係にあることを容易に知ることができる。

 報告者らが、法律上の報告義務・真実義務を負い、違反には刑罰がともなえば(委任契約上の義務違反は債務不履行責任で刑法上の責任を負わない)本件報告書のようなデタラメ報告書など存在しない。つまり、本件報告書は内部業務における内部文書であり、いかなる内容であってもその刑事責任を問われることはない(注)。せいぜい業務が「拙い」と評価されるのであり、発注者である取締役会に都合が悪ければ無視されるだけである。

 しかし、本件報告書は見事に取締役の期待に応えたものであったから、取締役会は公表し、援用・利用した(できレース、八百長レース)。つまり、内部・外部報告書の公表自体が取締役会の恣意的判断によるものである。

 ヤメ検弁護士が重宝されるのは、利用価値が高いことにある。つまり、取締役会の希望に沿う内容を弁護士資格を明示して報告してくれるからである。私見では、元検事総長や検事正など検察幹部であったヤメ検弁護士が調査委員会の責任者であれば、検察は先輩に敬意を払い、検察独自で犯罪捜査に着手することはないと考えられる。これはいわゆる「忖度」の世界であるから、私見の当否は読者各自の感性によって判断してもらう他ない。

 今後、外部委託の「第三者委員会」報告が正当か否かは受託弁護士の経歴―元検事総長―にあるのではなく内容―認定事実と論理―にあることを国民は肝に銘じなければならない。

 しかも、第三者委員には民法上の責任(委任契約上の善管注意義務)は格別、どのような報告結果であっても報告書の名宛人が関電取締役会であるから、世間に対しては何らの責任も義務もない。報告時期が遷延してもかまわないし、国民の常識に反していてもかまわない。

 通例は灰色・玉虫色報告(その典型的表現が「不適切であるが違法ではない」の常套句)で終わることが多い。強制捜査権のない第三者委員会には限界がある、と最初からわかりきった弁解が付くのも通例である。

 報道によれば委任者である関電取締役会の期限に関する条件は「本年いっぱい」だったとされる。これをただし木弁護士は拒絶した。通常はこれで委任契約は不成立となる。しかし、結果は受託記者会見が開かれた。これは関電取締役会が譲歩したものと理解されているが、そもそも、その譲歩が不正・不当である。せめて報告期限を順守する受任者を探すべきである。こんなデタラメの契約を重大事件に関して締結する当事者が「阿吽の呼吸」で真実を隠蔽する可能性は大であることを指摘しておきたい。

 注:同書においてMの人格的悪性が証拠もなく具体的に多数列挙されており、これはMの名誉毀損として刑事責任を生じる。(死者に対する名誉棄損罪。刑法第230条第2項。)

 しかし、遺族が告訴告発しない限り、検察が同罪で同書の文責者のヤメ検弁護士を取調べたりましてや起訴することはない。事実、その動きはない。関電の電力使用契約市民が集団で告発しても、検察は無視するだろう。それでも市民は告発すべきである。

(つづく)

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