2024年04月27日( 土 )

【凡学一生のやさしい法律学】関電報告書の読み方~関電疑獄を「町の法律好々爺」凡学一生がわかりやすく解説(13)

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内部調査報告書の逐条解説

(3)法匪国家の出現

 かつて刑事冤罪裁判が頻発したころ、心ある刑事法学者は検察官司法と名付けてこれを批判し、世に警鐘を鳴らした(小田中聡樹他)。この当時の辣腕検事らはやがて退職し、天下り弁護士として巨大な有力企業団体にあるいは監査役、取締役として再就職した。世にいうヤメ検弁護士である。

 かくして、日本の有力企業団体の法令順守部門は事実上ヤメ検弁護士の支配領域・指定席となった。報酬が巨大なだけに巨大な退職検察官の利権となった。また、弁護士事務所開業ヤメ検弁護士も企業団体の法令順守部門に深く関与した。その技術的制度が第三者委員会方式である。

 不祥事を起こした執行部がその責任の曖昧化、結論の遷延化ひいては検察捜査の抑止―つまり地位の延命策―として利用したのが、私的契約に過ぎない部外第三者委員会(私人)への事件調査の依頼であった。従って、当然ながら、委員の選任は不祥事取締役の恣意的選択であり、費用は会社持ちである。このような出自がすでに不正な第三者委員会[私人]に公正公平な事実認定など期待することが無理である。

(例外的に誠実な事実調査を行うのが郷原信郎弁護士であることは有名事実である。)

 今般の関電疑獄においても、内部調査委員会の無様な報告内容に世の批判が集中すると、関電執行部は部外ヤメ検弁護士に第三者委員会の設置と受託を求めた。厚顔にも、再び調査報告をヤメ検弁護士に委託し、責任の曖昧化、処分時期の遷延化を企図した。これはもはや取締役の地位・権限の濫用と評価しうる。

 これに見事に答えたのが、元検事総長のヤメ検弁護士・ただし木敬一弁護士である。ただし木弁護士は堂々と結論提出時期の無期限を宣言した。いわく、「中途半端な調査はしたくない。4人の弁護士委員が全員一致するまで議論を尽くす」と。

 これほど傲慢な法律家の見解を他に知らない。確かに主張は一面では誠に正当である。しかし、事案は無期限に結論を出してもかまわない事案ではない。すでに内部調査委員会の一定の調査結果もでており、何よりも国税当局の賄賂認定事実が存在する。

 そもそも強力な捜査権もない一私人には限界があり、その微調整の程度が限界である。まるでゼロから出発する調査委員会の言いぐさである。そのような正論手法を貫徹するのであれば、受託そのものが不適切であり、受託しないことが誠実な法律家の姿勢である。

 もともと何もできないのに、できるふりして無期限の時間を主張する。傲慢と批判する所以である。受託契約そのものは私的契約で、委託不正取締役会の利益を企図するものであるから、まったく公共性、公正性がない。名称が第三者委員会と中立公正性を装っているだけで、完全な依頼者の意図を重視する私的業務受託契約である。結論期限の無期限宣言はまさしくその依頼者の意図に沿うものである。

 問題は、このような私的受託契約に過ぎず、結論が取締役会に不都合であれば無視されるような本質を持つ第三者委員会の答申であるにもかかわらず、関電の業務全般に強い監督管理権限と義務のある監督官庁の長である総理大臣が、その調査の開始を(無期限宣言された)結論をまって国の管理監督権利義務を発動すると国会答弁したことである。

 この答弁の不条理さを指摘できない野党の法的理解力の無さもさることながら、もはや日本は無法国家であり、法匪が跳梁跋扈する法匪国家そのものである。この不条理は国民自身の手によって解決する他ない。

 第三者委員会の結論が国民の良識・常識に沿うものであれば、調査期間と調査費用の浪費であり、国民の良識・常識に反するものであれば、一層、国民の批判の声が高まるだけである。国民の非難の声の高まりなど何の痛痒も感じないのがヤメ検弁護士である。

 否、国民の非難の声の高まりなどもともと冤罪裁判頻出時代から、何の痛痒も感じなかった日本の検察官だから退職後に、民間の私的契約における自由な結論の主張については、もはや、何も怖いものがないのは当然である。法律的にはまったく違法でないと主張できるからである。これは虚偽の無罪事実を主張する被告人の弁護人の弁論と同じ構造である。

(つづく)

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