2024年04月25日( 木 )

【凡学一生のやさしい法律学】関電報告書の読み方~関電疑獄を「町の法律好々爺」凡学一生がわかりやすく解説(14)

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内部調査報告書の逐条解説

(4)同書が隠蔽した決定的事実

 本件事件はほかの贈収賄事件とは際立った特異点がある。それは収受者全員が普通に見られる収受事実の最初の否定が存在しないことである。通常、収受者は当初、賄賂の収受を否定する。しかし動かぬ証拠を示され、観念して収受の事実を認める、というのが一般的な贈収賄事件の発覚から自認・自白までの経緯である。

 報道(および同書)によれば、本件贈収賄事件は受注会社吉田開発への税務調査を端緒とするとされるが、税務当局はすでにその段階で、各収受者が弁解不能な確固たる証拠を入手把握していた可能性がある。それらの確固たる証拠の1つとしてMが残した詳細な賄賂提供記録である。

 そうであれば、関電の内部調査委員会が動き出した段階では収受者全員が税務当局に対して賄賂の受領を認めていたことになる。そこで問題となるのは、同書が主張するような「やむを得ない受領」とその理由となる「Mの脅迫・恫喝の事実」を税務当局に抗弁したか否かである(期待可能性がないことの抗弁)。通常であれば、当然、収受者たちは税務当局に抗弁しなければ不条理である。そうであれば、賄賂の返却はその時点では存在しないことになる。そして、如何なる理由にせよ税務当局が指摘した時点で賄賂を保有していれば、それは高額の財物の取得と認められ、納税義務が発生する。つまり、同書は財物収受した結果生じた納税の義務とその履行について詳細の一切を隠蔽した。これは、各要件事実の記述において、日時の特定である日付を故意に全部省略隠蔽することにより実行され、発覚を防いだ。個別の要件事実について極めて重大な要素である日時の記載が省略隠蔽されたことが、そもそも事実調査の体をなしていないことはいうまでもない。目的が事実調査になかったことの証左といえる。

 虞犯取締役らが税務当局に対して無罪の主張(期待可能性がない事実の抗弁)をしたかどうかさえ、同書は隠蔽している。結果は、抗弁は受け入れられないから納税している。

 しかし、税務当局には受け入れられなかった抗弁を、世間にたいしては堂々と主張した。

 ここまで法匪は傲慢不遜なのである。国民を完全に馬鹿にしているのである。

 さらに、税務当局の指摘により納税義務の履行があった場合、受領賄賂の返却は一体何の意味があるのか。税務当局には賄賂の収受を認め、世間、捜査機関には賄賂の収受を認めないという行為自体が、重大な矛盾である。返却により犯情の軽減を企図し、辞任要求の圧力を回避したものであまりにも自己保身の見苦しい姿という他ない。原子力発電所の事故で先祖伝来の土地を失い生活基盤を奪われ今なお数万人の人々が塗炭の苦しみにある福島原発事故の被災者の人々の心情を慮るなら、あまりにも拝金主義的姿勢である。
結局、賄賂の返却時期とその返却方法とその証拠、全員が足並みそろえて返却した明らかな組織的行動。これらが、ヤメ検弁護士の入知恵による弥縫策であれば、そもそも同書の記載内容にはまったく客観性・信頼性がないこととなる。これらの重大矛盾と隠蔽された事実を同じヤメ検弁護士が報告開示するとも考えられないが、ただし木第三者委員会の何時になるかわからない調査結果の公表を待つ以外にはないのか。実に不条理である。

(つづく)

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